ラリー展開を、落ち着く・仕掛ける・さらに崩すの3つに分けて考えてみる。
今回はシングルスのラリー展開に関する基本的な考え方についてです。
実際は、サービスゲームとリターンゲームには有利不利の差があります。しかし、この基本的な考え方は両方に共通したベースの考え方になり得ます。
基本的な考え方を理解することの最大のメリットは、プレーに迷いがなくなることです。それによりメンタルの強化にもつながります。
「試合の打ち合いの中で、どこに打てばよいのか、実はよくわかっていない」という方は、今回の話を理解できれば、頭の中が整理されることでミスが減り、理にかなった隙のないプレーでポイントを重ねられるようになります。
是非、ヒントにしてみてください。
サーブからはじまりポイントが決着するまでの間に放たれるすべてのショットには、以下の3つの目的のいずれかが必ず存在します。
- 落ち着く
- 仕掛ける
- さらに崩す
逆に言うと、これ以外ありません。
例えば、「決める」はありません。エースやウィナー は狙って打つものではなく、「仕掛ける」や「さらに崩す」を繰り返した結果、たまたま決まるものと考えます。そうすることが、メンタルを安定させ、ミスの少ない、質の高いプレーを維持するための秘訣のひとつです。
また、同様の理由で「一発で決める」もありません。テニスは必ず「仕掛ける」と「さらに崩す」の最低2本以上は必要と心得ましょう。
それでは、それぞれの目的と主に選択すべきショットを説明します。
1. 落ち着く
試合をしていると焦りを感じるタイミングというものがあります。 例えば、試合の序盤で思うように調子を上げられない時間帯や、相手の強打に攻め込まれて体制を崩されている瞬間などです。
こういった時は、意識的に自分を落ち着かせる必要があります。まずは、メンタル面を意識しながら、いつもの自分を取り戻すことを目指します。
別の言い方をするなら、まずは「相手のボールに慣れる」「プレーを自動化する」ということです。
そのために取るべき手段は「難しいことをしない」です。具体的には、迷わずセンターに深くです。これがもっとも簡単で、もっとも崩されるリスクの少ないショットといえます。
例えば、試合慣れをしていない選手や、相手が明らかに格上で大きなプレッシャーを感じざるを得ない場合は、サービスゲームだから有利とはいえません。そういったケースでは、サービスゲームでもリターンゲームでも、サーブを1球目、リターンを2球目と考えて「6球目までは、迷わず落ち着くことを目的にセンターに打つ」と決めてもいいかもしれません。
相手のボールに慣れてきたら、このショットの数を減らしていきましょう。
2. 仕掛ける
ラリー中に心を落ち着かせることができ、かつ、センターへの深いボールで相手の返球が少し甘くなったら、自分から仕掛けることも考えます。
私はこの仕掛けるショットを「キーショット」と呼んでいます。キーショットの具体的なコースは以下です。
順クロス方向のサービスラインとベースラインの中間からコートの外に出て行くコースへ、低く強くです。
落ち着けている前提で、相手の球が少し甘くなったら、平常心でキーショットを打ち込みます。
これにより、さらに甘い返球を生み出せる確率が高まります。
なお、サーブはキーショットになり得ます。そのため、サービスゲームは、落ち着くためのショットが不要となることがあります。
3. さらに崩す
キーショットで相手を崩せたら、次はさらに崩します。
1と2は選択肢も少なくシンプルなので迷わず打てますが、3は選択肢がいくつかある上、選択肢にあるそれぞれのショットが、技術的にも1と2より難しいという問題があります。
そのため、ここでのポイントは次の3つです。
- どのショットを選択するか、相手の返球体勢を観て素早く判断する
- 可能な限り間合いを詰め、相手から時間を奪う
- 一発で決めようとせず、あくまでも平常心で打つ
具体的に選択することになるショットの例を難易度の低い順に挙げると以下です。
- 打ち急がずに十分引き付けて再度キーショットを打ったコースへ打ち、ネットプレーへ
- ライジングまたはトップで捕らえてオープンコートへ打ち、ネットプレーへ
- キーショットで相手を完全に崩せて、相手がロブ返球体勢ならネットに詰めて打てる範囲にドライブボレー、そのままネットプレーへ
繰り返しますが、これらのショットを平常心で打ち切ります。そのため、「この一本で決める!」となってはいけません。あくまでも「さらに崩す」です。そして、「さらに崩す」の後のボレーも「さらに崩す」なのです。
もちろん、「仕掛ける」や「さらに崩す」の後に相手のスーパープレーで形成が逆転することもあります。その時は、「仕掛ける」や「さらに崩す」の後であっても「落ち着く」ためのショットを選択しなくてはいけません。
次回の試合で意識してみてください。
それではまた、きっとどこかで。