元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

自分の「得意パターン」の見いだし方とその時の落とし穴

前回の記事の中で、「試合中、ポイント間は過去ではなく未来のことを考えよう」という話をしました。ここでいう未来とは「次のポイントの取り方」です。今回はそれに関連する話です。今回も大学の選手の具体的な相談内容を共有します。相談内容にあるタイプの人は特に参考になるかもしれません。その選手は次のような悩みを抱えていました。

試合中、ポイント間で次のポイントの取り方を具体的にイメージすることの重要性は理解しています。それを実践するためには、相手を観察することだけでなく、自分の得意なパターンを持つことが必要だと思うのですが、自分の得意パターンは何を起点にして探せばいいでしょうか?というのも、自分はすべてのショットが平均的で得意なショットが分からないので、ライジングで打つかそうでないかくらいでしかショット毎の明確な違いを出せず、パターンが立てにくくて悩んでいるためです。何かアドバイス頂けると幸いです。

要約すると次のようになります。

得意パターンが見いだしづらい。その原因は、飛び抜けて強いショットを持っていないから。

確かに、飛び抜けて強いショットを持っていた方が得意パターンは見いだしやすいです。ただ、「飛び抜けて強いショットがないから得意パターンを見いだせない」という落とし穴には注意しなくてはいけません。

言うまでもなく、得意パターンを見いだすためには自己分析が必要です。

そこで分析すべきは、「自分の飛び抜けて強いショットは何か」ではなく「試合中に悩まず打てる安定したショットは何か」です。これがその人の武器、得意パターンを見いだす起点です。

例えば、「俺は人より速いサーブが打てる!ビッグサーバー!自分の武器はサーブだ!」という選手のファーストサーブの確率が40%で、実はあまり得点できていなかったとしたら、それは武器とは言えません。

なので、まず相談者の武器が何かを理解するためのヒアリングを行いました。

私「試合中、比較的悩まず安定して打てるショットはなんですか?

彼は自分を褒める習慣のないタイプの人間だったので、聞かれない限り自分の良いところ、武器になり得るショットを言語化することをあまりしてこなかったようです。少し考えて、思い出したかのように彼は話しだしました。

彼「あ、リターンだと思います。リターンは不思議とどうすればいいかわかるんです。相手のサーブがこうだから、こうすれば返球できるという解を見いだし、実践できます。リターンは得意と言えると思います」

特に自分を褒める習慣のない選手にとって「そうだ、俺はリターンが武器なんだ」と意識することはとても重要です。そしてこれが得意パターンを見いだす起点となります。

さらにヒアリングを続けました。

私「リターンゲームはどんな展開になりますか?リターンでポイントを取りにいきますか?」

彼「そう言われてみると、リターンはその後のラリーをイーブンにすることを目的に打っています。主導権を握ろうとするのはその後のラリーの中です。ただ、そのストロークも苦手ではないのですが、一発がないので得点するのにいつも苦労します」

私「なるほど。それであれば、まずは相手のセカンドサーブの時に、可能であればファーストサーブのときにも、リターンで一気に主導権を取り4球目に決めにいく、さらには6球目に備えてネットを取りにいくというパターンはひとつ考えらませんか?」

彼「なるほど。できなくはないと思います。今後そのパターンを積極的に試してみようと思います」

また、シングルスの場合、できれば得意パターンは次の4パターン見いだせるとなお良いです。

  1. サービスゲームのデュースサイド
  2. サービスゲームのアドバンテージサイド
  3. リターンゲームのデュースサイド
  4. リターンゲームのアドバンテージサイド

少なくとも、次の2パターン。

  1. サービスゲーム
  2. リターンゲーム

ちなみにダブルスは、相手が2人なのでさらにその×2パターンとなります。

私「サービスゲームはどうですか?どのように得点していますか?」

彼「実はサーブに苦手意識があるため、サービスゲームの方が難しさを感じています」

私「なるほど。今日は得意パターンの話なので、サーブの苦手意識は別途この先1ヶ月で克服するとして、サーブの後にどのようなプレーを選んでいるか教えてください」

彼「はい。今はサーブで相手を崩せないので、基本ストロークラリーで主導権を握ることを考えます。そこで実践するのがはじめにも伝えたライジングで相手の時間を奪うプレーです。ただそれも頻度はそれほど多くありません」

私「なるほど。まずは今やっていることをもっと意識的に強化していくとよいと思います。相談者さんはリターンやライジングなど、早いタイミングでボールを捕らえるプレーが武器ということです。それらのプレーを選択すると自ずとポジションは前になるので近い将来ボレーの必要性も感じるのではないかと思います」

彼「わかりました。やってみます」

得意パターンは試合で苦なく打てるショットを起点に見いだそう!