大坂なおみから学べ!頭脳派でない選手は頭脳派とチームをつくるしかない
まず、失礼を承知で言い切りますが、大坂なおみ選手の強みは頭脳ではありません。
大坂選手の強みは、あの恵まれた身体が生み出すパワーと技術力の高さが生み出すショットの精度です。
大坂選手も「コートでは、私は3才児」と話しているように、自分自身もそう分析しているはずです。
頭脳が強みの選手は、試合中にメンタルが崩壊することはありません。
だから、メンタルをコントロールしてくれたバジンコーチと組むことで結果を出すことができました。
その結果が、グランドスラムでの優勝2回と世界ランキング1位だったのは、バジンコーチだったからではなく、大坂なおみ選手だったからです。
さて、以前「地頭がないと優勝できない!」「地頭は7歳以降は育たない!」と、自分は地頭があるタイプではないと自覚している人にとっては元も子もないことを書きました。
優勝に限らず、厳しい戦いを制して目標を達成するためには、心をコントロールするための頭脳、適切な戦略を導き出すための頭脳は不可欠です。
今回は、頭脳派ではない選手がこれをクリアするための唯一の方法について書きたいと思います。
持ってなければチームをつくって他の人に補ってもらうのが一番
一見ひとりで戦っているように見えるトッププロも、チームをつくり結果をつくりにいっています。選手の考えがおよばない部分を他のチームメンバーが補っています。
逆にいうと、プロでさえ他の人に頼ります。自分のこだわりを追求した上で、自分にないものは他の人に補ってもらうのが一番合理的です。その手段を選択すれば、関わる人みんながハッピーになれます。
もちろん、トッププロのチームはカラダづくりやメンタル、テニス技術などそれぞれの分野のプロフェッショナルで構成されているので、学生テニスプレーヤーが同じようなチームをつくることはできません。
それでも、例えば大学のリーグを戦う場合、もともと「部」というチームが存在するため、マネージャーやレギュラー以外の選手、OB/OG、コーチが、レギュラー選手の考えのおよばない部分を補うことができます。
例えば、身体が強く、技術力のあるレギュラー選手と対戦相手の分析が得意で、選手のメンタルコントロールが上手いレギュラー以外の部員でペアをつくり、信頼関係を築くことができれば、そのレギュラー選手のパフォーマンスを最大化することができます。
シングルスの個人戦を専門に戦うプレーヤーはコーチング能力を持つ親や信頼するコーチなど、特定のパートナーがいるとパフォーマンスは上がります。
まさに大坂選手とバジンコーチの関係です。これが頭脳派ではない選手の弱点を克服する唯一の解決策といっても過言ではないと考えています。
大学のチームも大坂選手とバジンコーチのような関係で構成する
以前、「チームを強化するために主将がまず分析すべき部員4タイプ」と題してチーム力を高めるための考え方を紹介しましたが、ここからは、これをもう少し具体的に紹介します。
これは私が大学で挑戦しているチーム改革のひとつです。
必ずしも1対1の関係をつくる必要はないのですが、私は大学のテニス部をこの大坂選手とバジンコーチのような組み合わせで構成していくことに挑戦しています。
メンタル面に限らず、選手が考えられないさまざまなことを他の部員がサポートするチームを大学でつくります。
具体的には、選手とマネージャーの構成比率で3:2を目指します。さらに、マネージャーには男子も採用します。
ここまでする理由は「大学の規模」にあります。
大学の規模が小さい場合、選手が最低限しか集まらないという問題を抱えることになります。
大学のテニス部員はテニスだけしていればいいわけではありません。チームの運営を自分たちで行います。いわゆる事務仕事がたくさんあります。
さらに幹部になると大きなプレッシャーがのしかかります。幹部になると結果が出せなくなるレギュラー選手も少なくありません。
「猫の手も借りたい」というのが実情です。ただ、部員にとってそれは昔からあるごく当たり前のことで、古い慣習、部の間違った常識から部員自身がそう考えることはありません。
それを解決するための手段が、選手とマネージャーの役割分担です。マネージャーがチームの力になれる部分がたくさんあるということに気づくことがはじめの一歩となります。
男子マネージャーは専門性を高める
できる仕事には個人差があってよいと考えていますが、女子マネージャーの仕事は主に事務的な仕事というのが一般的だと思います。合宿の手配やボールの購入や在庫管理、練習や試合のサポートです。ガット張りや球出しを担当する女子マネージャーもいると思います。
一方、男子マネージャーには例えば以下のような、より専門的なサポートを担ってもらいます。
呼び名を「マネージャー」とはせず、役割によって例えば以下としてもよいかもしれません。
- ヒッティングパートナー
- フィジカルトレーナー
- メンタルトレーナー
- 戦略マネージャー
また、男女問わず、マネージャーよりも選手の方が偉いという認識も排除します。選手とマネージャーは役割が違うだけで対等であるべきです。部員一人一人がリーグ昇格に不可欠なキーマンとなります。
もちろん、成果におけるレギュラー選手の貢献度は大きい。しかし、レギュラー選手の方が偉いわけではありません。
チームづくりには、フェアな風土づくりも不可欠です。
課題はリクルーティング
ここまで示してきたように理想を掲げるのは簡単です。しかし、これを実現し、部に定着させるのは簡単ではありません。
前述している通り、部の常識を変えなくてはいけません。これは繰り返し説いて、特に主将と幹部の理解を得てトップダウンで変えていきます。
そして最も大きな課題が、マネージャーの採用です。新歓の時期にどれだけリクルーティング活動ができるか。これにかかっています。
まだまだ課題は多いですが、実現に向けて部に働きかけていきたいと思います。
高い目標をクリアするために、自分にないものは他の人に補ってもらうべし!