元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

スポーツは言語で考え実行するものではない!映像でイメージして実行するものだ

以前の記事でも書きましたが、私には息子がいます。今7歳で4月からは小学2年生です。時が経つのは早いものです。

 

私の子育て歴もまもなく8年となるわけですが、これまでに息子からたくさんのことを学んできました。

 

そのなかのひとつに以下があります。

 

すべての赤ん坊に先天的に備わっている能力を大人になってからも活用できれば、人間はいつまでも、どんどん成長できる

 

それは「テニスで強くなりたい!」という選手はもちろん、すべての人の、あらゆることの成長願望を叶えるひとつの解だと考えています。

 

その能力は主に次の7つです。

 

  1. 興味を持つ
  2. 観察する
  3. 想像する
  4. 真似る
  5. 挑戦する
  6. 夢中になる
  7. 考える

 

これらはすべての子どもが生まれた時から持っています。

 

我が子だけでなく、これまでテニスコーチとして1,000人以上の子どもたちを見てきましたが、何かの病を持って生まれた子どもでない限り皆これを持っていることは間違いありません。

 

子どもがはじめて走れるようになる時のようにテニスもできるようになる

 

赤ん坊は皆、二本の足で立つようになり、歩きだし、走れるようになります。はじめて走れるようになる時、子どもはどうやっているのでしょうか。

 

まだ1歳なので「そうか!もっと足を上げて、もっと腕を速く振って、前かがみになればいいのか!」とは考えていないということは誰にでもわかります。

 

これも子どもを観察するなかで確信していることなのですが、赤ん坊は、間違いなく「見よう見まね」でいろいろなことを習得しています。それこそ笑うのも、食べるのも、喋るのもです。

 

見よう見まねでできるようになるというのは、前述の能力でいう2~6の能力の活用です。観察し、想像し、真似し、夢中になって、挑戦し続けるからできるようになります。

 

「真似る」というのも、「細部を真似る」のではなく、まずは「雰囲気を真似る」です。

 

それはまさに長嶋茂雄の世界です。

 

「ここにグッとためて、ここでズバッとしたら、ドカンといくんだな。次はそんな感じでやってみよう」

 

いや、もちろん、子どもが頭の中で長嶋茂雄のようにこう言葉にしてるわけありません。

 

その代わりに、映像でイメージしています。先天的に備わっている想像する能力を活用しています。

 

事例を紹介します。

 

スポーツの上達にはYouTubeが不可欠

 

私はテニスに夢中になり小さな大会で優勝するレベルに育っている小1の息子に対してこれまで言語で教えたことがありません。

 

唯一言ったのは「まず頭の後ろにラケットを持ってくる」ですが、それも言う必要はなかったと、むしろ反省しています。

 

私は息子のコーチではなく、どちらかというとヒッティングパートナーという立ち位置でいることを強く意識しています。

 

理由は、そうすることで自発性を育み、前述の能力をフル活用することがもっとも成長スピードを高められる手段と確信しているからです。

 

言語で教えない代わりにやっているのが、「今日はシャポバロフが勝ったよ!」「チチパスが優勝して11位になったよ!」とATPのニュースを共有しながらハイライト動画を一緒に観ることです。

 

自分が手本を見せることもありますが、それもわずかです。彼はほとんどをプロのプレーから学んでいます。

 

ナダル選手やフェデラー選手のサーブの真似を解説付きで披露してくれます。

 

もちろん、完コピというレベルではありません。彼なりに真似しているのです。

 

戦術は言語で伝え考えさせてYouTubeで理解を深めてもらう

 

テニスの戦術を習得していく事例も紹介します。

 

息子には、バック側に振られた時にそれをクロスに返球できず、ボールがストレートに流れてしまい、次にクロスに切り返されてやられるという問題がありました。

 

これを解決するためにクリアしなくてはいけない課題は次の2つでした。

 

  1. 戦術を理解する
  2. 振られた態勢のバックハンドストロークをクロスに返球する

 

1は「頭脳」なので、言語で伝えてプレーしながら考えてもらい、映像を観て理解を深めてもらいます。

 

2は「技術」なので、映像を観せてイメージを持ってもらいます。

 

まず、プレーしている時に戦術について説明します。

 

「その態勢でストレートに配球すると次に相手にクロスに打たれて追いつかなくなるという法則があるよ。だからクロスに打つことも考えたい」

 

その場では簡潔に伝えるだけでそれを無理やりやらせるようなことはしません。むしろ息子は「いや、ストレートに打ってもすぐに戻れば問題ない」と反論し、そのプレーにこだわりパパをやっつけにかかります。そこは放っておきます。

 

この頃、ATP500の大会で18歳のオーガーアリアシム選手が決勝に進出するという快挙がありました。

 

例のごとく息子とその大会のハイライト動画を観たところ、「オーガー選手かっこいいー」となり、息子は食い入るように観ました。

 

その動画には、オーガー選手の相手が不用意にストレートに打ったボールをオーガー選手がクロスに切り返すシーンが出てきます。また、バック側に振られるオーガー選手がクロスに返球し、相手に先にストレートに打たせてクロスにウィナーを取るポイントも出てきます。

 

そこで簡潔にコメントを添えます。

 

「オーガーもあの態勢ではクロスに打つんだね。ストレートに打つのは一発で決められる可能性が高い時なんだね」

 

彼はその後もう一回そのハイライト動画を観ていました。

 

その時は、その成果が次の日の朝練ですぐに出ました。特にその練習をしようということもなく、いつものように勝負を意識したラリーをします。そして私が忘れていた頃に、バック側に振られた返球を見事にクロスに切り返してみせます。

 

「今のバック、よくクロスに打ったなぁ!やられたぁ~!!」

 

驚きを伝えると息子は得意げに言いました。

 

オーガー選手みたいにやってみた

 

子どもに限らず、人間は、イメージしたことを実現させる動物なのです。

 

ラリー中は数秒後を映像でイメージしてそれを真似ろ

 

以前、持力(じりょく)と実力の話をしました。試合で発揮できた力が実力。試合では、持力を100%以上発揮し、実力を高めることが何よりも重要。そう書いています。

 

「ゾーンに入る」とは、まさにその境地です。テニスの王子様の「無我の境地」もこれです。

 

そして、それを実現するための手段のひとつでもっとも有効な方法が「数秒先を映像でイメージしてそれを真似る」です。心と頭を無にしてそれを実践します。

 

ポイント間は戦術を言語で考えますが、ラリー中は映像でイメージし、あとは直感に頼ってプレーします。

 

今飛んできたこのボールを自分がプロのように美しく打ち返している映像を想像し、頭で考えることなく、細胞の反応に任せてそれを真似ます。

 

もちろん練習からそれを実践している人が成し得る技です。

 

なお、ゾーンに入ると次の相手が打つコースまで手に取るように数秒前にイメージできるようになります。

 

「すべてが思い通りにプレーできる!」

 

そんな感覚を持ったらそれはゾーンに入っています。3試合に1回はゾーンに入る。そんな目標を持つのも有効かもしれません。

 

日常的にトッププロのハイライト動画を観て、普段からプロの真似をしろ!