元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

プロがストレートを狙う割合を知り、考え方がわかればプレーの質は上がる。

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大学でシングルスの試合を観ていると「なんで今ストレートに打ったんだろう?」と思わされることがあります。

 

そう思う理由は、意図が伝わってこなかったからです。

 

わかりやすくいうと、そこでストレートに打つメリットがなかったということです。

 

そのストレートがミスとなっていればなおさら間違った選択だった可能性について考えなくてはいけません。

 

逆にいうと、無駄にリスクを取っている可能性があることに気づいた方がいいということです。

 

今回は、シングルスにおけるストレート、特にダウンザライン(サイドラインに沿うように打つショット)の考え方について書きたいと思います。

 

さて、本題に入る前に、試合でストレートを効果的に使い、打ち切れるようになるために不可欠で重要な話をします。

 

それは、ラリー中は脳みそを使いすぎてはいけないということです。

 

記事の冒頭で「意図」という言葉を使いました。意図は「狙い」や「考え」という言葉に置き換えることができます。

 

しかし、この意図は、ラリー中に脳みそで考えることではないということを理解することがとても重要です。

 

それは、このブログで繰り返し重要と伝えている「プレーの自動化」さらにはその先にある「ゾーン(無我の境地)」をより身近なものと考えてほしいからでもあります。

 

最近は、選手のパフォーマンスを高めるためには、ゾーンを目指した方が手っ取り早いのかもしれないと考えるようになってきています。

 

そのため、ポイント間は攻め方やポイントの取り方について脳みそを働かせて考えますが、ラリー中の判断は脳みそではなく身体の細胞に任せるということを体現できるよう選手に働きかけています。

 

もう少しわかりやすくいうなら、試合中、その時その瞬間、今、打つべき、最適なコースは、ラリー中に感じとるものということです。時に、直前でひらめくことさえあります。

 

そして、それを成し遂げるために必要不可欠なことが、知識と経験です。

 

今回の話は、その知識の部分です。これから書くことを頭に入れて、まずはそれを意識しながらたくさん打ち、自分でさらに理解を深めましょう。

 

それを繰り返し、たくさん試合で実践した先に、正しいひらめきと完璧なショットを手に入れることができます。

 

リターンゲームは6本に1本が目安

 

まずはじめに、ダウンザラインのリスクを理解する必要があります。

 

ネットが高くなっているところを通さなくてはいけない上に、アウトまでの距離が短いのがダウンザラインです。

 

この事実だけで、物理的に考えて、万人に共通してクロスよりもダウンザラインは難しいショットといえます。

 

また、飛んできたボールを飛んできた方向に打ち返すことは簡単ですが、飛んできた方向とは異なる方向に打ち返す点もダウンザラインを難しくする理由のひとつです。

 

つまり、クロスから飛んできたボールをクロスに打ち返すよりも、ストレートに打ち返すダウンザラインは圧倒的にリスクがあるといえます。

 

以前、これだけリスクのあるショットをプロはどれくらいの割合で打っているのか気になり、フェデラー選手とジョコビッチ選手の実際の試合を調査しました。

 

調査したのは、ネットが高くなっている部分の上を通過させようとする割合です。

 

具体的には、次の図で示す範囲を狙った割合です。

 

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数えたのは、リターンを含む、すべてのストロークです。サーブやボレーは含みません。

 

その結果は「22〜25%」でした。

 

また、フェデラー選手とジョコビッチ選手に共通していたのが、リターンゲームではダンザラインを狙う本数が少ないという点です。

 

これは、考えれば当然といえます。ただでさえ不利なリターンゲームでリスクを取りすぎるとミスが先行し、ブレイクするチャンスを得られないためです。

 

トッププロでこの割合なので、アマチュア向けにわかりやすくいうと、ダウンザラインに打つ割合の目安は以下といえそうです。

 

 

本数でいうともっとわかりやすくなります。

 

 

ただし、これはあくまでも目安です。相手とのレベル差の大小によってはこれに従わない方が正解ということもあります。

 

また、ゲーム単位で「このゲームはリスクを取らずに長いラリーをしていこう」や「このゲームはリスクを取って攻めていく」ということをサービスゲームでもリターンゲームでも考えるべき場面もあります。

 

この目安はあくまでも平均値です。

 

どんな時もその時の正解は自分で導くものです。そのことは忘れないようにしましょう。

 

特に技術力の低いアマチュアの場合、ダウンザラインを打つ本数を減らした方が正解というケースの方が多いかもしれません。

 

基本、リスクのないところに打ち、いつリスクを取るか。それがテニス

 

次に、配球の考え方についても触れていきます。

 

「今、自分はリスクを取った」という自覚をすることは、テニスの質を上げる上で非常に重要です。

 

逆にいうと、それが自覚できるようになるとテニスの質は上がります。

 

そのために次の図を頭に入れてラリーをしてみてください。

 

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例えばタオルなどを活用し、これを意識しやすい環境を作ってラリー練習をすると直感的に自覚できるようになります。

 

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是非、試してみてください。

 

次に知識として理解しておきたいことが、ストレートの使い方です。

 

これについてはまた次回、書きたいと思います。

 

それではまた、きっとどこかで。