試合に勝つメンタルとは?どうすれば持てるのか、具体的に説明してみます。
前回「メンタルを強くする方法は、本番で自分と向き合う時間をたくさんつくる以外ない。」と題してメンタルを強化するために必要な考え方について書きました。
今回はその続編です。
重要な大会の試合前、あるいは試合中に、具体的にどうすれば勝つために必要なメンタルを持つことができるのか、勝者のメンタリティーについて書きます。
今回の話も、テニスに限らず他のすべてのスポーツに応用の利く話です。是非、参考にしてみてください。
まずは、勝者のメンタリティーの鉄則を理解する必要があります。その鉄則が、「自分がやること(Do)に意識を集中する」です。これは試合前も試合中も同じです。
これを理解するために、まず自分のメンタルが試合で弱くなった時のことを思い返してみてください。
メンタルが弱くなる時は、自分では変えられないことだけに意識が奪われていることに気づけます。そして、どうすれがいいかわからない状況に陥っています。
テニスの場合、例えば以下です。
「次の相手は格上かぁ」
「よし、次の相手は格下だ」
「次の相手はビッグサーバーだ」
「次の相手はバックハンドに隙があったはずだ」
「風が強くてうまくプレーできない」
「イレギュラーが多くてやってられない」
「まぶしくてサーブが打ちづらい」
「コーチに見られてる」
「今の審判(セルフジャッジの場合は相手)のジャッジは怪しかった」
「チャンスボールをミスしてしまった」
「重要なポイントを落とした」
「よし、先行した」
「あぁ、ブレイクされた」
「よし、先行するぞ」
「ここはブレイクさせてはいけない」
「もう少しで勝てるかもしれない」
これらは主に「環境」と「結果」です。そして、環境と結果は自分で変えることはできません。
こういったこのばかり考えているような状況に陥っていたらコーチはあなたにこういうでしょう。
「もっと自分のプレーに集中しよう」
そうなのです。自分が変えることができるのは、自分のプレーだけなのです。
「環境や結果はわかった。で?次にあなたは何をする?」
この答えである「やること(Do)」にのみ意識を集中する。それが、勝者のメンタルを生み出す唯一の方法です。
「そのやることがわからないから困っているんじゃないか」という方は、是非、前回の記事を読んでください。
自分のプレーに集中できている状態とは?
では、自分のプレーに意識を集中するとは、具体的には何を考えていて、何を考えていない状態なのでしょうか。
勝者のメンタルを持てない選手の多くは、自分のプレーに集中するとはどういうことかがわかっているようで、わかっていません。
前回の記事では、試合中にやるべきことは以下と書きました。
- 自分の動作がどうなっているのかを冷静に分析する
- その動作を改善することだけに全神経を集中する
- それを確実に実行するためにポイント間に自分に言い聞かせる
- 一定したアグレッシブなプレーを継続する
今回は具体例を交えながら、これらについて解説します。
自分の動作がどうなっているのかを冷静に分析する
自分が納得のいくプレーができている時というのは、相手のボールを打ち返すために必要な動作ができています。
特に重要なポイントは次の3点です。
- 身体を大きく使えている
- また、相手のボールに素早く反応できている
- その結果、自分の打点に入れている(間に合っている)
まず必要なことは、試合中にこれらができているかを分析し、できていなければ「この動作をこう変えればいい」という解を自分で出すということです。
例えば、以下です。
「スプリットステップ後の一歩目をもっと早く」
「スプリットステップの直後にテイクバックを完了させろ」
「テイクバックは肩甲骨を意識してしっかり大きく取れ」
「目線を低くしてもっと足を細かく速く動かせ」
「打点の瞬間の手ごたえをもっと味わえ」
「打点で目線をブラすな」
これらは、人によって異なります。もっと別の何かが解となる可能性も大いにあります。
そして、前回の記事に書いた通り、自分とたくさん向き合うことで正しい解が出せるようになります。
その動作を改善することだけに全神経を集中する
複数の例を出しましたが、プレー中に意識できるのはせいぜいワンフレーズです。逆にいうと、ワンフレーズに収まる1つか2つのこと以外はできている状態はつくっておけなくてはいけません。
私の場合、強く意識することでプレーが改善され、かつメンタルが安定していくフレーズ(=解)が以下です。
「テイクバックは早く大きく、そして打点を味わえ」
これはストローク用です。リターンもほぼこれと同じです。サーブ用はまた別にあります。
念のためもう一度いいますが、これは100人いれば100通りです。自分の解は自分で見つける必要があります。また、日によって変わることもあります。
このように、分析した結果自分で出した解を実行することに全神経を集中させます。このフレーズを頭の中で何度も繰り返し唱えながらプレーするのです。
これが、自分のプレーに意識を集中できている状態です。
この時、「リードされてる」や「相手のバックハンドを狙った方がいい」といったことを同時に考えようとしません。
例えば、勝つために相手のバックハンドを狙った方がいいことがわかっていた場合は、そこを狙うために自分がやることに意識を集中するということになります。
バックハンドを順クロスに打つために自分がやること、フォアハンドを逆クロスに打つために自分がやること、例えば、「ボールの入り方」なのか、「ボールを触る場所」なのか、「フットワーク」なのか。
もちろん、この何をするのかという内容の細かさも個人によって様々です。
「スプリットステップ直後にテイクバック」や「肩の力を抜け」と個別具体的な技術を示す言葉で表現した方が上手くいくという人もいれば、「準備を早く」や「リラックスしろ」という大雑把な表現をした方が上手くいくという人もいます。
また、技術ではなく戦術の実行に全神経を使うという行為も「やること(Do)」への集中なので、効果を発揮する場合があります。
例えば、「バックに高く打ち続けてチャンスをバックへ」や「サーブをワイドに打ってオープンコートにボレー」、「ドロップで仕掛ける」などです。
ただし、これは技術面の問題がなくなった後、このブログでしつこく説明してきたプレーの自動化ができている前提です。
それを確実に実行するためにポイント間に自分に言い聞かせる
試合序盤の緊張や勝ちビビりなど、メンタルが不安定になる時間というのは数ゲーム続きます。
その間、自分のプレーを分析した上で、自分がやることに意識を集中するわけですが、どうしても無意識の思考の癖がそれを邪魔します。
その無意識の思考はたいていの場合次のようなネガティブな思考です。
「なんでまたそこでミスするんだ!」
「このゲームを取られたらかなり厳しい状況に追い込まれる」
「そこでイレギュラーするなよ」
これも冒頭で紹介した環境や結果です。これらは無意識に出てくるものなのです。
そのため、強い意志でかき消す必要があります。その手段が、サーブやリターンの前に次のポイントでやることをブツブツと声に出して唱える、です。
例えば、その内容が素早いテイクバックとポイントをとり急がないということであれば、ポイント間は以下を何度も声に出して言い聞かせます。
「テイクバックを早く。そしてじっくりプレーしろ。テイクバックを早く、じっくりプレーだ」
これをセルフトークといいます。
一定したアグレッシブなプレーを継続する
最後は「ステイ・アグレッシブ」です。
これを思い出すべき瞬間は、試合中の次の2つの場面です。
- 勝ちビビっているとき
- 試合を諦めてしまいそうなとき
この2つに陥る前は自分を信じてプレーができている瞬間があったはずです。
それは前述の試合で求めらえる3つのポイント「大きな動作」「素早い反応」「十分な準備」ができている時間帯です。
この時のポジティブなメンタルとプレーがアグレッシブなプレーです。
前述の2つの場面では、それがだんだん小さくまとまったプレーになってしまうのです。
特に勝ちビビりは、リードを守ろうと保守的なプレーを選択することから生まれます。
その時、相手は逆に開き直ってアグレッシブにプレーしてくるため、逆転現象が起きるというわけです。
自分のプレーが小さくなっていることに気づいたら、改めてやることに意識を集中し、アグレッシブなプレーに戻し、それを継続します。
そしてこの時、まずやらなくてはいけないことが「自分を鼓舞する」です。
この場面では、ほとんどの場合、気持ちが萎縮しています。
それを鼓舞するために、大きなガッツポーズや「カモン!」と大きな声で前向きな言葉を発し、今一度、眠りかけた気持ちを奮い立たせる必要があります。「絶対勝つ」と心の中で何度も唱え続けるというのもいいかもしれません。
それが、一定したアグレッシブなプレーを継続するということです。
そしてもうひとつ、アグレッシブという言葉を意識しすぎるあまり「攻め急ぐいでミスする」という結果にならないように注意します。
ここでいうアグレッシブは、あくまでもダイナミックにプレーするということであり、攻める、強いボールを打つ、ということではありません。
長くなりましたが、今日伝えたいことは以上です。是非、試合本番で強く意識してみてください。うまくできれば、試合序盤の緊張も早期に解消できることがわかると思います。
それではまた、きっとどこかで。