元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

「なかなか試合に勝てない」と悩む選手が知るべき2つの力とやるべきこと

以前、部のエースでチームを引っ張る幹部のひとりからLINEでこんな相談を受けました。

みんな日々上達していることはわかるんです。ただ試合でなかなか勝てない。同じくらいのレベルに見える相手に数ゲームしか取れずに負けて帰ってきたりします。

テニスが大好きでたくさん練習していて、上達している実感もあるのに、なかなか試合に勝てないと悩む人は少なくありません。今日はこれについて書きたいと思います。

彼は続けます。

みんなもっと勝つことに責任を持ってほしいなと思っています。負けた時も「けど、良いところもあった」という話ばかりで、あまりその結果を重く受け止められていないように見受けられて… このままだとチームは強くなれないのではないかと危機感を覚えています。

また、こうも話していました。

彼らは練習こそが重要と考えているようです。練習で思い描いているプレーができるようになってからでないと試合では勝てないと思っているようなのですが、僕はそうではないと思っています。今持ってるもので勝ちにいくという考え方をもっと養ってほしい。

とても重要な問題に気づけているなと、感心しながら話を聞いたのを覚えています。この考え方の違いはいわゆる勝ち癖がついている選手と負け癖がついている選手の違いのひとつです。

それに対して、私がその勝てないみんなを見て感じていることを彼に伝えました。

「彼らは、勝つことに無責任になっているわけではありません。彼らは勝ちたいと心から思っています。負けてばかりいる自分を良しとは思っていません。まず、そこは信じてあげましょう」

「彼らは、勝ちたいんだけど勝ち方がわからない、勝つために本当に必要なことや考え方がわからないんです。そして、それは言っただけですぐにわかるというものでもありません。丁寧に伝えて、さらに経験を通してはじめてわかるものです。だから、私たちはそれを言って伝えるだけでなく、それを経験し、実感できる環境づくりに注力しましょう」

簡単に言ってしまえば彼らは「試合慣れしてない」だけなのですが、練習の後に試合はするものと信じてやまない彼らが「今持っているもので勝ちにいく」ことの重要性に気づくためには何を理解する必要があるか調査するために何人かにヒアリングしました。

「練習の時にできることが試合だとできないということがあると思います。練習でできる力を100%とした時、試合で発揮できている力はだいたい何%くらいですか?」

多くの選手が次のように答えました。

60%

中には、次のように答える選手もいました。

練習でできることと同じことを試合でできるほど試合は簡単なものではないと思っています。よくて80%です。

これを聞いて確信しました。この間違った理解こそが勝てない原因です。

テニスに限らずスポーツで勝つためには、磨かないといけない力が2つあります。それが次の2つです。

  1. 持力(じりょく) ※ 造語です
  2. 実力

持力とは、文字通り、その選手が持っている力です。わかりやすく言うと、練習でできることです。

それに対して実力とは、実際の力です。つまり、その選手が試合で発揮できた力です。

  • 実力 = 持力 × 発揮率

例えば、陸上の100m走で世界記録を出すウサイン・ボルト選手やフィギュアスケートで世界最高得点を叩き出す羽生結弦選手は、この発揮率が100%を超えているということです。試合の中で成長していると言えます。

ここで勘違いしてはいけないのが、これは世界のトップ選手だけがなしえる特別なことではないということです。

発揮率100%超えは、要は自己ベストです。世界のトップになろうという話ではなく、自己ベストを出そうという話です。これは、プロやアマチュア問わず、すべての人間が成し得ます。

だからもし、あなたが勝利を目的としたテニス選手なら、発揮率90%は当たり前、100%を超えることを常に目指さないといけません。

言うまでもなく、テニスに限らず、スポーツ選手は実力がすべてです。どんなに持力が高くても実力がなければ勝てません。

どんなに練習を頑張って持力を高めても、それだけでは勝てないのです。持力を高める以上に実力(=試合における発揮率)を高めないといけないのです。

では、どうすればそれを高めることができるのでしょうか。

その答えは「試合にたくさん出る」ということ以外ありません。発揮率を練習で高めることはできません。

つまり、練習だけやっていてもダメなのです。試合を練習以上にやらないとダメなのです。「テニスが好き」だけでは勝てないのです。「試合が楽しい」がないと勝てないのです。まず練習ではないのです。まず試合なのです。「試合に始まり、練習し、試合に終わる」それが選手なのです。

選手は、試合ファースト!