元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

試合中、ポイント間やラリー中に考えるべきこと

以前、1年生で将来部を引っ張ることになるであろう選手のひとりからLINEでこんな相談を受けました。

同じような悩みを持っていて「その気持ちわかる!」となるプレイヤーは多いと思うので相談内容とその回答をほぼそのまま共有したいと思います。

突然の連絡失礼します。この度はメンタルと戦略面で宮田コーチに伺いたいことがあり連絡させて頂きました。お時間のある時にご返信いただけると幸いです。

最近他大学との合同練習でシングルスの試合をする機会があったのですが、ストロークで簡単なミスをしてしまいそもそもラリーにならない、いつも入るはずのショットが全く入らず(前後左右の調節ができない)次のショットへの意識がなくなり、フットワークがおざなりになる、というような悪循環に陥りました。

この問題を解決するために、技術面でのストロークのミスに関しては、

  1. 頭(目線)を動かさないイメージ
  2. 腰引き、股関節捻るイメージ
  3. 打ち終わりを早くして次のショットに備える

という3つを意識して打ち込み等で反復練習をしたらいいのではないかという結論に至ったのでこれらを実践していくつもりです。

しかし、どうしても自分ひとりで分からなかったことが、「プレー中(ポイント間も含めて)に、何を考えながら試合を進めていけばいいのか」ということです。

試合中に気付いたこととして、サーブに関してもストロークに関しても、自分がどこに打つのか決めていない時はミスショットになっていると感じました。なのでショットを打つ前に、自分がどこに打てばいいのか考えてから打とうと思ったのですが、「このショットはどこに打てばいいのか?」と考えて混乱してしまい、そのまま相手に攻め込まれるか、自分がミスしてポイントを落とすという場面がとても多くなってしまいました。その後の普段の練習でラリーをする時も同じような状態になってしまい、攻めと守りの意識や速球の対応など全く上手くいかず、現状は「ポイントってどうやって取るんだろう???」と考えてしまっている状態です。

自分で現在意識している試合中に考えることとして、

  1. ラリー中にショットをどこに打つか
  2. ポイント間にその直前のポイントはどこが良い or 悪いので、次のポイントはどうすればいいか

という2点を考えながら試合をしているつもりです。しかし、考えても結論がでないまま次のポイントに臨んだり、ラリー中の自分のミスに意識が持っていかれて他のことを考えられなくなったりしてしまいます。

結論として、宮田コーチには、

  1. ラリー中とポイント間でどのようなことを考えてプレーするべきか
  2. ラリー中は考えすぎない方がいいので、変に意識せずともストロークを打てるように練習するべきなのか
  3. 自分はそもそも考えすぎなのか
  4. ラリー中の自分のミスの対処方法、「どうしてミスしたんだ?」からの悪循環に陥らないよう、ミスした後どのような心持ちでいればいいのか

この4点を伺いたいです。よろしくお願いします。

自己解決を目指し自分でいろいろ考え抜いた結果、「あぁ~もうわからん!コーチに聞こう」となったことがよく伝わってきます。そんな中、自分の考えがここまで整理できて、聞くべきことを最後の4点にまとめられていることがとても素晴らしい能力だなと思いました。そのことも伝えつつ、私が回答した内容は以下です。

以前から相談者さんと話をしていて、相談者さんは本当によく考える選手だなという印象を受けていました。そして理想が高く、自分に厳しい選手という印象を持っています。その分、理想と比べて自分の不足している部分を見つける能力が高い。そのため自分を責めてしまうこともありますよね。このタイプは、心が折れさえしなければ、めちゃくちゃ強くなります。だから、もし悩みすぎて、心が折れそうになったら、自分の成長している部分にも目を向けて、自分を褒めることもしてあげてくださいね。

さて、前置きはこれくらいにして、以下本題です。

1. ラリー中とポイント間でどのようなことを考えてプレーするべきか

まず、ラリー中について。

リーグ本番では「脳で考えて→脳が体に指令を出して→体を動かす(3ステップ)」ということをショットを打つたびにしていると必ず間に合わなくなる世界です。いや、高速にそれをやってのける人もいるのですが、相談者さんの性格を考えるとそこを目指さない方がいいと感じています。

だから可能な限り、「体の細胞が覚えている通りに体を動かす(1ステップ)」をベースにできるよう努力することをおすすめします。つまり、たくさん打って体に刷り込むということです。

わかりやすいよくあるシーンは、拮抗した試合の終盤のブレイクポイントなどです。最後の最後で人間は楽して取りたいと考えてしまい「決め急ぎ」ます。これまでやってきたように我慢して淡々と体で反応して打ち続けるのではなく、先に脳みそが反応してしまい安易な強打やドロップショットの指令を出してしまいます。

このように、体の細胞で反応するのではなく、脳みそが先に働くと体の動きにズレが生じミスにつながります。

この「細胞に反応してもらう感覚」が理解できると相当楽になります。テニスの王子様で言うところの「無我の境地」とでも言いましょうか。

次に、ポイント間について。

ここは逆に考えます。ここで考えるべきは「過去=さっきのポイントの反省」ではなく、「未来=次のポイントの戦略」です。

過去のことばかり考えていると悪循環に陥りやすいのは容易に想像がつきます。過去は変わりません。未来は変えられます。

なので、ポイント間で考える時間の配分は、「 過去 : 未来 = 1 : 9 」を目指すくらいがちょうどいいと言えます。

具体的には、例えば「相手は速いペースが好きだな、ペースを落として軌道の高いボールを打って、甘くなったらバック側に強打する戦術を取ろう」や「相手のバックにすきがあるな、バックバンドにとことん集めて、こっちはフォアの回り込みを多用して攻めよう」や「ワイドにスライスサーブを打って3球目でオープンコートにしっかり打って、ネットを取ってポイントにしよう」といったポイントを取るまでのラリーイメージを明確にします。

ラリーがはじまったらそのイメージだけ追いかけて、あとは細胞と直感、ヒラメキに任せます。

2. ラリー中は考えすぎない方がいいので、変に意識せずともストロークを打てるように練習するべきなのか

はい、その通りです。

3. 自分はそもそも考えすぎなのか

どちらかというと考えすぎな方だと思います。ただ、考えること自体は悪いことではないです。悪いのは、過去の出来なかったことばかり考えてしまい、相談者さんが問題視している通り、悪循環に陥ってしまうことです。

4. ラリー中の自分のミスの対処方法、「どうしてミスしたんだ?」からの悪循環に陥らないよう、ミスした後どのような心持ちでいればいいのか

まず、「どうしてミスしたのか?」の答えは「それが実力だから」です。もちろん試合中に改善することも出来ますが、画期的には変わりません。

もしかしたら、相談者さんは自分の今の能力を正確に把握できていない可能性があります。どういうことかというと、練習で出来ることが試合で出来ないということは、持力(じりょく)はあるけど実力がないということです。つまり、試合本番に持力と同じだけの実力を発揮する能力がないということです。まずそれを理解します。

試合で出来ていることが実力なのです。そして実力を上げることが重要なのです。

それが理解できると、そのミスは想定内になります。そうすると、試合中のそのミスと冷静に向き合えるようになります。もちろん、勝つためには、そのミスを受け入れつつ、それ以上に別の部分でポイントを取れる必要があります。

例えば、ある条件がそろうと腰痛が出るという爆弾を抱えながら、それでも楽しく生きている人がいるとします。その人はどうなると腰痛の症状が出るかわかっているので、症状が出はじめても納得感があり、どう対処すればいいかわかっているので常に冷静でいられます。そんなイメージです。

もちろん、相談者さんの腰痛(練習でできて試合で出来ない点)は本当の腰痛と違いこれからどんどん改善することができますので、別の武器を持つことに注力するのではなく、その改善に注力するのも良いと思います。

最後に、具体的に何を重視すればいいかという話ですが、そのひとつが試合です。試合をたくさんして、試合に慣れましょう。持力は練習で強化できますが、実力(試合で力を発揮するコツ)は試合をする中でしか習得できません。

以上を伝えました。

ポイント間は未来を具体化し、ラリー中は細胞で反応せよ!