元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

強打!強打!そして自滅… を卒業するために知っておくべきテニスの本質

私がコーチを務める大学のエースで、部員の中でもっともテニスを知っていることからメニュー係を任されていた選手がいました。

今回は、彼から練習メニューを決めるために事前に意識合わせした内容を共有したいと思います。

彼が部の選手たちを見ていて「改善されれば成果につながりやすい」と考えていたストロークの課題は次の3点でした。

  1. 100%ではなく70%前後の力でプレーしてほしい
  2. 決めにいくとき一発で決めようとしないでほしい
  3. 相手のボールが浅く打点が低くなった時の適切な処理を覚えてほしい

要は、力に頼りすぎて自滅が多いことを問題視していました。

テニス歴の浅い男子テニスプレイヤーの多くが「パワーショットはカッコイイ」「強いショットを打った方がいいに決まってる」と考え、ハードヒットを追求する時期があります。同時に、パワーショットを打たずに確実に返球してくる相手に敗れとても悔しい思いをします。この年の大学の部員にもそのような選手が少なからずいました。

テニスの本質

この課題を抱える選手は、まずテニスの本質を頭で理解する必要があります。そこで私が選手たちに伝えた内容が以下です。

テニスは、時間を奪い合うスポーツです。

「時間を奪う=相手が打点に間に合わない状態をつくる」です。

大学のリーグに出場するレベルの選手は、こっちがどんなに強いボールを打っても、打点に間に合えば普通に返してきます。

つまり、パワーで相手をどう圧倒するかではなく、どうすれば相手が打点に間に合わない状態をつくれるかを考えるべきです。

パワーを使うことが目的になってはダメです。パワーは時間を奪うためのひとつの手段にすぎません。

時間を奪うための手段はパワー以外にもいろいろあります。

  • ❶ 緩急   ※パワーはこの急
  • ❷ 間合い
  • ❸ コースの隠ぺい
  • ❹ 心理の逆

この4つを使えるとパワーだけに頼っていたときよりももっと楽にポイントを取れるようになります。

前述の通り、多くの選手が緩急の急だけに頼っています。そのため、焦って、決め急いで、力んで、自滅しています。

逆に言うと、❶~❹すべてを駆使できればそれだけ自滅の少ない選手になれます。

組み立て方

さて、ここからは「次のポイントはストロークを打ち合う」と決めた場合の組み立て方を考えてみます。

お互いがベースラインで打ち合う段階で単調に緩急の急だけを振り回しても、相手との距離が遠い分、相手は比較的簡単に打点に入れてしまいます。

まずは、❶~❹すべてを駆使して、どうやったら相手が打点に間に合わない状況を作れるかを考えます。

もちろんボールの深さも重要ですが、今回は深さにも頼らない組み立て方です。

コースは、クロスを基本とし、心理の逆(❹)を狙う時にストレートに配球します。クロスを繰り返し見せているからその逆を狙えます。当然、センターへの配球が多くなると心理の逆が狙いづらくなります。

次に、相手のボールが浅くなったら間合い(❷)とコースの隠ぺい(❸)を駆使して相手からさらに時間を奪い、相手の体勢を崩しにいきます。

コースの隠ぺいは、主に相手の浅くて緩いチャンスボールで使うショットのため、自ずと間合いをつめる機会が多くなります。

その後は、間髪入れずに連続で間合いをつめることで比較的簡単に、あくまでも結果的にポイントを獲得できまるようになります。

時間を奪うい続けるためには積極的に間合いをつめる必要があるので、自ずとライジングやドライブボレー、ネットプレーが増えます。

ポイントを取るまでのステップをまとめると以下です。

  1. ベースラインでは❶~❹すべてを駆使
  2. 浅くなったら❷間合いをつめる
  3. 間合いをつめ続けた結果ポイントを得る

ちなみに、「あと1ポイントとるだけ!この1ポイントがどうしてもほしい!」という場面こそ、ベースラインからの安易な一発狙いに走ったら負けです。

浅いボールの判断

最後に注意したいのが浅いボールの判断です。前述のステップ2を実施する判断。わかりやすく言うと次の図の黄色いエリアに入ったボールは間合いをつめて(またはコースの隠ぺいで)相手から時間を奪うチャンスです。

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具体的には次のショットで、7割くらいのパワーで攻めましょう。

  • 腰から胸の高さで捕らえるライジングショット(❷)
  • チャンボに近いボールは肩を入れてコースを隠したショット(❸)

ただし、このエリアに入ったとしても、自分の打点が腰より低くなる場合は例外です。打点が低くなった時は、攻めるでもなく守るでもなく、組み立て直します。

逆にポジションを戻す時間を取り戻す必要があるので、しっかり打点に入り、対空時間のあるボールを深く打ち、戻ります。

この時の球種はスピンでもスライスでも良いです。確実性の高い方を選びましょう。

テニスとは、時間を奪い合うスポーツだ!そのために、緩急・間合い・隠ぺい・心理を活用せよ!