試合で勝てない原因が基礎体力にあると突き止めた選手の話
フェデラーは言っています。
勝つために必要なことだと納得さえできれば、トレーニングはそんなにつらいものじゃない。
これは雑誌「テニスマガジン」の特集となっていたフェデラーのインタビュー記事にあった言葉です。
勝つために今の自分に本当に必要なことが何なのか。それを理解することは強くなるために不可欠なことのひとつです。
そして、その際に重要なことが「自分でも考え、納得していること」です。
今回は、勝つために今やらなくてはいけないことを導き出した大学のある選手の、それを導き出すまでの過程を共有したいと思います。
それは彼からのこんな相談からはじまりました。
最近、部内戦や対抗戦で試合を経験できたことで、特に大きな課題が2つ見つかりました。
❶ アプローチショットの安定
先日宮田コーチと電話して、相手の弱点を見つけてそこを突くというプレースタイルを目指そうと意識しています。このスタイル自体は自分と合っていると思うので、これからも続けていきます。ただ、今の自分のアプローチショットに安定感がなく、ポイントが取れない状態が続いていることが課題です。相手の弱点をつくプレーでのポイントの取り方として、相手の甘い返球をしっかり攻め込むというパターンが3~4割を占めることがわかりました。相手のレベルが上がるにつれて相手のミスによる得点が減っていくことを考えると、このパターンの割合はもっと増えていくと思われます。しかし現状で自分は、アプローチショットを打つパターンになったポイントの獲得率が半分もありません。原因は主にアプローチショットそのもののミスです。大きくアウトすることが多いです。
❷ 集中力の持続
1セットの中で集中の波がありすぎて、頑張って取った重要なゲームの次のゲームを簡単に落としてしまいます。
これを聞いて、それぞれの「原因をどこまで分析できているか」が気になったので次の質問をしました。
それぞれ原因がどこにあると分析していますか?分析していることがあれば教えてください。
彼からの回答は以下でした。
アプローチショットに限らずなのですが、ストロークでもたまにホームランを打ってしまうことがあります。その原因は目線が安定していないことだと考えています。目線の安定はジャンプショットやアプローチ等、普通のベースラインからのストローク以外にも必要なことですか?
集中力については、持続する方法を模索している所です。自分では原因が分からず、悩んでいる状態です。
この後、彼が試合をする動画も確認し、よく分析できていることがわかりました。私は次のように回答しました。
アプローチショットでアウトミスが多くなる原因と考えている「打点の前後での目線の安定(=目線をブラさない)」は、すべてのショットで不可欠と考えた方が良いです。目線をブラさないという意識の代わりに、顔をブラさないという意識でも良いかもしれません。
相談者さんが対抗戦でプレーしている動画も観ました。練習の時よりも膝を使って伸びあがりながら打っていますね。そのため目線が下から上に毎回ブレます。それがショットの精度の邪魔をしているのは間違いなさそうです。
また、顎も上がることもあります。これは特に低い打点をスピンで引っかけて持ち上げる時に見られます。
普段からもっと顎を引いて、打点から顔を遠ざけずに顔をブラさず打ってみてほしいと思いました。
それから、集中力については、体力・持久力があると集中力も持続しやすいという関係がありますが、そのあたり関係ありそうですか?
彼から良い反応がありました。
なるほど。顎を上げないというイメージは掴めるので、これからは顎を引いて顔をブラさないというイメージに変えて打ってみます。
膝を使って打ってしまう感覚は確かにあります。どうしても太ももがキツくて踏ん張りが効かなくなってしまうことが多いので…。
最近の練習で気づいたのですが、恐らく1分程度ラリーをすると途端に足が重くなる感覚があります。自分のイメージしている粘るラリーをするには体力が無さすぎるなと思いました…。
さらに、最近試合に出させてもらう機会が増えて、体力と筋力の重要性を思い知らされました。
2つの課題の共通点は「基礎体力」ということを彼は自分で導きました。ここまでくると動機が明確になり実行力も発揮されます。彼も次のように話していました。
今までは面倒くさくなって体力トレーニングが続かなかったのですが、それが必要ということを理解できました。ランやトレーニングの継続を今後の目標にします!
勝つために本当に必要なこととわかればどんなトレーニングも苦にはならない。そしてそれは、自分で導け!