元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

ダブルス力UP!ボレーヤーのプレッシャー不足と決定力の低さを改善したい

学生テニスプレーヤーは皆まずシングルスを想定して練習します。そのためダブルスがわかっていない選手は少なくありません。また、学生の試合には一般のスクールで教わるダブルスの基本が当てはまらないことも多く、学生選手向けの情報が少ないのも事実です。

 

今回はダブルスについて、以前、大学で指導した内容をお届けします。ここでは、ストロークを主体とするプレーヤーの多い学生のために、雁行陣を前提とします。

 

課題はタイトル通り、ボレーヤーのプレッシャー不足と決定力不足です。この課題をクリアするために、まず以下を理解する必要があります。

 

まず何より仕事を理解せよ

 

学生プレーヤーの場合、ダブルスにおけるボレーの決定力不足の原因は、技術不足以上に理解不足であることが多いです。

 

まずは何より、「何を目的に、何をすべきか」を理解しましょう。

 

やるべきことを理解できていないためにボレーする機会が少なくなり、さらに、打ちに行くボレーではなく打たされるボレーが増え、ミスも増える。

 

この悪循環が、試合でプレッシャーを与えられず、ボレーでポイントを取れない最大の原因です。

 

もちろん、決定力不足の原因がそもそも技術不足という選手もいます。しかしその場合でも仕事を理解することが先です。

 

試合のなかでどう機能できると正解なのかをイメージできていないまま打ち込み練習をしても、それは時間の無駄となってしまいます。

 

観て学ぶのが一番早い

 

このブログでよく伝えていることのひとつにお手本となる動画の活用があります。

 

ダブルスにおけるサーバーとリターナーのペアの仕事も動画を観て学ぶのがもっとも早く正確です。

 

まず、下記リンクの動画を何度も観て以下を実施してください。

 

  1. まず、サーバーのペアはどこに立ち何をしているかを確認し、それはなぜかを自分なりに考え、理解を深めます。
  2. 次に、リターナーのペアはどこに立ち何をしているかを確認し、それはなぜかを自分なりに考え、理解を深めてください。

 

男子用動画(https://youtu.be/J_YUwbFrLNI

女子用動画(https://youtu.be/OryQpqHBUtM

 

これらの動画を観て、まず自分なりに分析し、自分で導き出した納得感のある答えが最も重要な答えです。

 

以下はあくまでも参考情報として、さらに自分のプレーをグレードアップできる情報があれば取り込みましょう。

 

3つの基本ポジション

 

動画を観るとダブルスにおけるサーバーとリターナーのペアのポジションは次の3つであることがわかります。

 

  1. ネット前センター近く(攻撃的)
  2. サービスライン前後(守備的)
  3. ベースライン前後(守備的)

 

勝負の鍵を握る最も重要なポジションが1のネット前センター近くです。アイフォーメーションのように、ネット前コート中央が最も相手にプレッシャーをかけられるポジションです。

 

逆に言うと、ネット前センター近く以外のポジションは相手ストローカーにプレッシャーを与えることはできません

 

ダブルスの基本は、どれだけこの1のポジションを取り、ボレーでポイントを取ることで相手にプレッシャーを与えることができるかで勝負が決まります。

 

一方、2と3の守備的なポジションは、自分のペアが不利な状態になっている時に取るポジションです。

 

例えば、男子で相手のビッグサーバーのファーストサーブでは3を取ります。また、セカンドサーブでペアのリターンが相手ボレーヤーに捕まる心配がそれほどなければ2を取ります。

 

リターン時の最適なポジションは相手のサーブ力、ペアのリターン力によって変わります。

 

他には、ペアが「上げる!」と言ってロブでしのぐ時もスマッシュに備えて3を取ります。

 

サービスゲームとリターンゲームの違い

 

また、動画を観ると、サービスゲームとリターンゲームではじめに取っているポジションが違うことがわかります。

 

サービスゲーム

ペアのサーブで優位に立てるため、ポジション1を取りリターナーにプレッシャーを与えます(詳細は後述)。

 

リターンゲーム

相手のボレーヤーが攻撃的なポジション1で優位にプレーを展開するため、そのボレーを返球できるポジション2または3を取ります。深く強いリターナーストロークでチャンスを作ったその瞬間に形勢を逆転し、ポジション1を取り、相手のポジションを押し下げ反撃します。

 

ちなみに後衛は?

雁行陣の後衛は、相手ボレーヤーがネットよりも高い打点でボレーすることのないようにストロークを打つことが求められます。
特に男子の場合は、サービスゲームではペアがポジション1をゆずらない、リターンゲームではペアがポジション1を奪えるストロークの展開を実践します。ボレーヤーに捕まらないようにストレートとクロスを打ち分け、かつ、チャンスを作れるように深く打ち込む必要があります。

 

ポジション1では相手と駆け引きする

 

雁行陣を取る場合、ポジション1でのポイントの取り方は次の5つです。

 

  1. 一か八かの捨て身のポーチ
  2. ストレートを読んでボレー
  3. クロスを読んでポーチ
  4. ペアのボールのコース(=相手の体勢および打点時の面の向き)で反応するボレー
  5. プレッシャーで誘うミス

 

1から4を実践し、5を狙います。

 

アイフォーメーションの場合は、ポーチという概念がなくなり、2か3を事前に決め、5を狙います。アイフォーメーションは相手との駆け引きを前提としたフォーメーションです。

 

ここで強調したいことは、雁行陣も相手と駆け引きすることが前提ということです。なぜなら、駆け引きができていなければ、それは相手にプレッシャーを与えられていないことを意味するからです。

 

そして、相手にプレッシャーを与え、駆け引きをはじめるためには、1つ目の一か八かの捨て身のポーチを試合序盤にたくさん実行する必要があるということです。

 

ストレートを抜かれても気にせず、ストレートを抜かれる以上にポーチを決め、相手のミスを誘います。

 

雁行陣の場合は、一か八かの捨て身のポーチを実行してはじめて、相手にプレッシャーを与えることができます。

 

ストレートを抜かれてもそれは1ポイントに変わりない

 

しかし、相手のレベルが上がると捨て身のポーチはしずらくなります。いつでもストレートに抜かれる気がするからです。

 

しかし、それでも実行すべきです。

 

理由は、相手のレベルを高く見積もりすぎている可能性があるためです。10回捨て身のポーチをしたとして、6回以上ストレートを抜ける相手はそうそういません。

 

相手の実力は、想像で判断してはいけません。実際に試しながら確認していくべきです。

 

もうひとつの理由が、雁行陣はポーチに出ない限り相手にプレッシャーを与えることができないためです。ポーチをしないということは存在意義がないということです。それはダブルスではありません。

 

10回ポーチをトライして、4ポイント取れていればその10回のポーチは無駄ではありません。2回ポーチをトライして2回ミスをするより圧倒的に相手にプレッシャーを与えられています。

 

雁行陣では、捨て身のポーチで駆け引きをはじめる癖を身につけましょう。

 

今日書きたいことは以上です。

 

この内容を十分に理解し、動画にあるプレーのイメージをどんどん実践練習の中で試し、自分のものにしてください。

 

ダブルスは、駆け引きしてなんぼ!雁行陣では、ストレートを抜かれてもいいから捨て身のポーチを実行せよ!