部を潰すなよ?少数精鋭の正しい進め方
以前、「チームを強化するために主将がまず分析すべき部員4タイプ」と題して、チームづくりの話をしました。
そこでは、「たとえ、選手として必要な努力ができない部員がいても、みんなチームの力になれるから、すべての部員の力を結集することを考えてチームづくりをしよう」と書いています。
これは、これまでのいわゆる体育会の常識からしたら考えられない提案かもしれません。「努力できないやつなんかいらない」というのが一般化された考え方でしょう。
そちらの方がシンプルで簡単というのは間違いありません。
規模の小さな学校で、部の存続が危ぶまれるチームでない限り、努力できないやつはいらないという方針でいいと私も考えています。
以前、私はコーチを務める大学のある年の幹部に、「部員数を確保し、努力できない部員も含めて、チーム力を上げていく方針を取らないか」と提案したことがありました。しかし彼らは、少数精鋭という方針を選びました。
この時彼らは、しっかりと自分たちの頭でも考え、話し合い、自分たちの考える方針を理由とともに示しました。
そのミーティングを通して私は、「彼らにとっては私の提案より少数精鋭を良しとする方針の方が正しい」と確信しました。
まず必要なことは幹部の信念
どんな方針を取るにせよ、強いチームをつくるためにもっとも重要なことは、この幹部の信念です。
「こうこうこういう理由から、俺たちはこうする」
目標達成のための、迷わずブレない軸がある。これが目標達成を目指す強いチームには不可欠です。
そもそも少数精鋭とは?
さて、ここからが本題です。本来、少数精鋭は、まず人数を決めるところからスタートします。
人数を少なくすることで、一人一人の責任は重くなり、メンバー個々人がそれに応えようとするため一人一人のパフォーマンスが上がり、ひいてはチームのパフォーマンスも上がるという考え方です。
例えば極端な話、30人の部員がいたとして、男子リーグの最少構成である6人を選抜し、残りの24人は辞めてもらう。そうすることで6人がレギュラーとしての役目を果たすべく、すべての環境をフル活用して強くなっていく。結果、30人いた時よりもチーム力が上がるという考え方です。
前述の幹部がとった方針はもちろんそこまで極端ではありません。少数精鋭でいくというよりは、少数になってもよいという方針です。
具体的には、試合量と練習量の義務化の導入です。義務量をこなせないと自ずといずらくなるチームにするという判断です。
「少数精鋭にする」という宣言を部員に伝えるのではなく「試合量と練習量を義務化する。最低限でもこれだけの量を実行して、みんなで目標を達成しよう!」と伝えます。
また同時に、実績のある新人に頼るチームではなく、3〜4年のリーグ生活期間で部は選手をしっかり育て、強くする、勝てる選手にする、その意識改革が必要です。規模の小さい大学は十分な選手経験を持っている新入部員が1名いるかいないかという状況が常なのでなおさらです。
ただし、少数精鋭という方針をとる場合、しっかりと対策しないといけないことが2つあります。
最低人数を確保する
ひとつ目は、最低限の人数を確保できないといけないという点です。そこを死守できている前提でこの方針を選択しないと部が潰れてしまいます。
幸いにも前述の幹部は5人、その5人が皆レギュラー候補でした。自分たちはこの量を必ずこなすと誓っていたので、幹部以外の部員が1人でも残ればチームは成立します。後輩のレギュラー候補にもこなせる気概のある選手がいたのでチームが成立することは確信できていました。
義務化した量を前向きにこなせる選手が必要人数いることを、できることなら事前に、本人たちと会話して確認する。人数を確保できることを確信してから少数精鋭という方針の運用を開始する。その順番を守らなくてはいけません。
私がその方針に納得できたのもそれがあったからです。しかし、これだけでは不十分です。
次年度に備える
しっかりと対策をとらないといけないことのふたつ目が、次年度への備えです。
この方針をとり一年やり切ると、その一年という節目で辞める選手が出る可能性が高まります。特に、チームの目標を達成した翌年が一番難しい年となります。
そこで重要となるのが次の2つです。
- 新歓時の求人内容
- 新入部員向けオリエンテーション
まず何より、4〜5月の新歓、新入部員を募集する際の説明に嘘偽りがないことです。
本気で昇格を目指していること、そのための試合や練習の義務量、何より経験の浅い選手も勝てる選手に成長することができる環境がそろっていること、誰もがレギュラーになれるチャンスがあること。これらをこのタイミングでしっかり伝えます。
「我々は努力する集団です。その分、確実に成長できます。我々と本気で部の昇格を目指しましょう」
そう伝えます。たくさん入ってもらうよりも、「それでもやる」という人を集める。量より質を取ります。
とは言っても、1名しか加入しないといった年があるとそれはチーム存続の危機になりかねません。新入部員獲得人数にも目標を定めます。
目標人数は、男子は6人、女子は5人です。「(義務量が定められているが)それでもやる」という人をこの人数集めるために、新一年生全員にもれなく宣伝することが重要となってきます。
なお、この数字の根拠は以下です。
就活を考えた時、3年の9月に開催されるリーグを最後にするという選択はあっていいと考えています。
チームが成立する最少人数は男子が6人、女子は5人です。
故障者が出ることに備えると3学年で男子は8人、女子は7人必要です。
つまり、最終的に残って欲しい人数は1学年で男子は3人、女子は2.5人。
継続率を50%で見積もると、必要な新入部員の数は男子が6人、女子が5人となります。
言うまでもなく、組織を長い間安定して運営するために、採用活動はもっとも重要な活動のひとつです。
次に重要なことが、新入部員が確定した後の新一年生向けのオリエンテーションで伝える内容です。
私がコーチを務める大学では、この講師を私が担っています。その目的は主に以下です。
- 大学生活ではテニスに限らずやりたいことをすべてできることを知ってもらう
- すべてやり切ったその先にある自分の姿、自分の人生をイメージしてもらう
- 3年生の9月、3回目のリーグでレギュラーとして自分が戦える可能性が高いことを知ってもらう
- その上で、2年と半年のテニスキャリアプランの例を示して自分に当てはめてもらう
- 人は短期間で急成長できることを知ってもらう
- 急成長するために必要なことを知ってもらう
私がこのブログに書いていることをまとめて伝える1時間の講義と質疑応答というイメージです。
これにより、個々人がリーグ生活のゴールを3年の9月に定めることができ、少数精鋭という方針でも継続できるチーム運営ができるようになります。
今日書きたいことは以上です。
どんな方針を取るにせよ、本気のチームをつくって、目標を達成し、かつ後輩たちのためにも長く続く、強い組織にしていきましょう。
義務化を強めて少数精鋭でいくなら新歓を強化し、オリエンテーションでしっかり意識合わせせよ!