「相手は格下だ」と考えて良いことなどひとつもない!どんな相手もリスペクトせよ
前回の記事でポイントやゲームを取った直後の油断を解消するための話をしました。
また、この油断とは別に、格下の相手に対する油断があると書きました。
今回は、この格下の相手に対する油断を解消するための話について書きたいと思います。
もちろん、勝負の世界をわかっている人からしたら当たり前の話です。「ここに書かれていることをわかっていない選手は、選手とは言えない」とさえ思うかもしれません。
それでもたまに見かけます。
常に本気で、勝つことをゴールに定めている学生テニスプレーヤーのみんなには是非ここに書いてあることを理解していただき、テニスを通して、人として正しい成長を歩んでください。
まずはじめに、断言します。
戦う前に相手を「格下だ」と想像するメリットは皆無です。
だからそれは考えない方がいい。
もちろん、戦う前に相手の情報を集めることは重要です。相手のプレースタイル、ボールスピード、球種、強味、弱点などを知ることができれば、事前に対策を立てて、勝つイメージを持つことができます。
ただし、相手の戦績や噂をもとに格上か格下かを判断することは、勝利を目指す際のプラスにはなりません。むしろ、勝負の世界をわかっていない人にとってはマイナスに働きます。
勝負の世界をわかっていない人は、格上だと考えれば過度に意気込み、格下だと考えれば油断します。
格の上下を考えること自体、ナンセンスです。
ランキングは選手のためのものではない
プロの世界でも一般的な見方となっているランキングは正に格付けです。
しかしこれは、選手のために作られたシステムではありません。観客が楽しむために作られたシステムです。
なので選手はランキングに惑わされてはいけないのです。
現にプロの選手自身は、観客である我々が思っているほどランキングを気にしていません。ランキングは結果であり、過去のことです。選手は皆、未来を変えるため、今に集中しています。
また、ランキングは、選手が1対1で対戦した時の実力の上下を示している訳ではありません。
ランキングが下降傾向にある30位の選手と上昇傾向にある40位の選手が対戦すれば、40位の選手が勝つ可能性が高い。
1対1の過去の対戦実績も同じです。それはあくまでも過去の実力差で、今の実力差ではありません。
0勝5敗で負けこしている選手が今回はじめて勝つということもあります。
格は、過去の結果に過ぎません。今、対峙している相手と全力で戦う。それが勝負の世界です。
やる前に諦めている選手などいない
繰り返しとなりますが、重要なことなのでもう一度書きます。
誰が相手でも、どんな相手でも、勝つために最善を尽くす、勝つために全力で戦う、最後まで諦めずに、勝ちに行く。それが勝負の世界です。それが選手です。
それは、プロもアマチュアも同じです。
もしかしたら格上かもしれないあなたが油断している時、相手は死ぬ気で勝ちに来ています。
やる前はもちろん、試合中も、こっちのマッチポイントでも、相手は死ぬ気で勝ちに来ています。
勝負を諦めている選手などいません。
だから、過去の実績で天狗になっている暇などありません。隙(すき)を見せればやられます。
相手はこれまで、この試合に勝つためにたくさんの努力を重ねてきています。
相手をリスペクトしなくてはいけません。
手を抜くなど失礼です。
油断するなど失礼です。
試合後は、真剣勝負をしてくれたこと、それにより自分が成長できたことに感謝しなくてはいけません。
それが、真剣勝負の世界です。
それを理解した上で、経験を積めば、誰もが皆、どんな相手に対しても油断しない選手になれます。
リスペクトすれば油断はなくなる
最後に私の実体験を紹介します。
私は、まったく油断することのない相手と対戦し、完敗した時、まったく油断しない選手がいることに驚き、多くを学びました。
その試合は、これまでの私のテニス人生でもっとも印象に残っている負け試合です。
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結果は、0-6,0-6。
それでも恥じる気持ちが芽生えることはなく、私は彼と握手をしていました。
相手は第1シード、もともと持っている力に大きな差がありました。それでも試合の途中に私の心が折れることはありませんでした。
特に第2セットは、持っている力をすべて出し切り、打ち合い、わずかですが相手に危機感を覚えさせることができました。そういった意味では充実感さえ覚える納得の負け試合でした。
この試合、彼はおそらく、アンフォースドエラーを片手でも指が余るほどしかしませんでした。
第2セットの終盤、私がベストプレーで彼を完全に追い込んだポイントでも彼は最後までボールを追い、本当にギリギリの、懸命のプレーでカウンターのパッシングショットを決めてきました。
私の「微塵(みじん)も試合を諦めない」という態度に応えるように、彼は淡々と、ベストパフォーマンスを発揮し続けました。
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ここで伝えたいことは、試合が終わる頃には敬意を覚えるほど、彼は本当に、ほんの一瞬も油断することがなかったという点です。
彼が私をリスペクトしていたかはわかりません。それでも、最後まで勝負を諦めない私に気づいていたのは確かです。
試合中盤に格下とわかり、もしかしたら80%の力でも勝てるかもしれない相手に対しても、まったく油断することなく100%の力を発揮しつづける。
これが勝負の世界です。
格下か格上かを考えることは無意味!どんな相手もリスペクトして全力で戦え!