元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

試合序盤は「打つべきところ」ではなく「打てるところ」に打て

以前、持力(じりょく)と実力という考え方について書きました。もともと持っている力と試合で発揮できた力。勝率を上げるためには、持力をどれだけ試合本番で発揮し、結果的に実力を高めることができるか、それが重要だと。

 

練習の時だけ強くても意味がないということです。試合に強くてなんぼ、本番に強くてなんぼ、それが選手です。

 

もっと言うと、試合本番に持力の発揮率100%を超えられるのが選手です。「今、この試合中が自分のテニス史上最強」という状態にできる術を身につけ、常に限界を超え続けるのが選手です。

 

そしてそれは、試合本番でしか成し得ません。練習では不可能です。

 

今回は、試合本番に自分の持っている力を120%発揮するために、具体的に取り組むとよいと考えていることを書きたいと思います。

 

これは、すべての選手に当てはまるベストプラクティスではありません。これを自分のベストプラクティスを導き出すヒントにしていただければと思います。

 

遅くても3ゲーム目には80%発揮できていることを目指す

 

本題に入る前に、ゴールの意識合わせです。これはすべての選手に共通して言える部分です。

 

理想は、1ポイント目で持力の80%を発揮することです。これは、不可能なことではありません。これをやれて損することは皆無です。なのですべての選手が目指すべきでしょう。

 

ただし、これには事前に想定している相手のボールスピードや球威、球種などが正確である必要があります。

 

事前の想定とギャップがあった場合でも、遅くてもサービスゲームとリターンゲームを1回ずつ経験した3ゲーム目には80%発揮することを目指します。

 

これは、やるべきことがわかっていれば誰にでもできます。誰が相手でもできます。

 

相手の弱点の分析よりも自分の調整が先

 

さて、前置きが長くなっていますが、本題に入る前にもうひとつ重要な話をします。

 

試合前の5分アップなどで相手の弱点を探すことは勝つために重要なことのひとつかもしれません。

 

しかし、例えば相手のバックハンドにスライスを打つと返球が甘くなることに気づけても、そこにそのショットを打つと2回に1回ミスするなら本末転倒です。

 

相手の弱点の分析と自分の調整は同時にできるのがベストですが、どちらを優先すべきかと問われれば「自分の調整の方が重要」となります。

 

アップや試合序盤は、自分のパフォーマンスを上げるために必要なことをひとつづつしっかり実践します。

 

例えば、「試合序盤は自分のプレーがどうなっているかを意識すると逆に打てなくなる。相手の弱点を探すことに集中していると自ずとパフォーマンスが上がる」という選手もいるかもしれません。

 

そういった選手は、相手の弱点の分析と自分の調整を同時にできる選手といえます。

 

体をほぐすためにたくさん打つ

 

ここからが本題です。自分のパフォーマンスを上げるために試合序盤はどうすればいいか。

 

はじめは緊張もあり体が硬くなっているものです。まずはじめに取り組むべきは、試合特有の硬さを取り除く作業です。

 

このことは読者のみんながわかっていることだと思います。ここで話したいのは、どうやってその硬さを取るか、その手段です。

 

人それぞれいろんな方法がありますが、自分にとってベストな方法を追求し、少しでも早くベストパフォーマンスを発揮できるようになりましょう。

 

試合特有の硬さをとりのぞくためには、体をたくさん動かす必要があります。なので、例えば、意図的に長いラリーを選ぶというのは理にかなった考え方です。

 

長いラリーをするためにはミスを減らす必要があります。そのために、足をたくさん動かし、スイングが小さくならないよう注意しながら、今この体勢でもっとも「打ちやすいコース」に迷わず返球します。

 

打つべきコースではなく、打てるコースを選択する。ここがポイントです。要は試合序盤は下手にリスクを取らないという考え方です。

 

たとえストレートにオープンコートができていても、ポイントを取り急いでストレートに打つのではなく、相手のいる打ちやすい順クロスを選択するイメージです。

 

以前、シングルスの基本戦術について書きましたが、基本戦術とこの考え方のベースは同じです。

 

コースを変える角度も少しずつ広げていきます。順クロスが安定してきたら、いきなり順クロスとストレートを打ち分けようとせず、まずは順クロスとセンターを打ち分けます。次がセンターとストレート、最後が順クロスとストレートという具合です。

 

これはあくまでも一例です。

 

人によってはラリーの長さは考えずに、はじめはミスを恐れずフルスイングをすることに集中して体をほぐしていくという選手もいるかもしれません。

 

あるいは、はじめからいろんなコースに打っていった方が体がほぐせるという選手もいるかもしれません。

 

その方が試合全体で見たときにパフォーマンスが上がるのであればそれを選択すべきでしょう。

 

いずれにしても、体をほぐすのが一番です。その時、もっともリスクの少ない考え方が「打てるところに打つ」「打ちやすいところに打つ」です。

 

試合では自動化できているショットしか使えない

 

これまで多くの選手を見てきてひとつ言えることが、技術的な細かいことを考えても試合では大してパフォーマンスを上げることはできないということです。

 

例えば、「テイクバックでもっと肘から高く引く」などといった細かい動作は考えません。

 

その手のことを考えないと打てないショットは体で覚えられていない証拠です。

 

そもそも、試合では自動化できている(考えなくても打てる)ショット以外は使い物にならないということを理解しておくべきです。

 

それが理解できると、技術的な意識よりもプレーイメージの方が大切であるということがわかります。

 

雰囲気やテンポ、リズム、じっくり長いラリーをしていくのか、早いタイミングで仕掛けるのか、情熱的でアグレッシブなプレーをするのか、クールに淡々とプレーするのか。そういった成功している自分のプレーイメージを持つことが試合では重要になってきます。

 

「打点を雑に扱わない」「打点はじっくり掴んで長く感じ取る」というのもプレーイメージのひとつです。感覚的なことというとわかりやすいかもしれません。

 

これは序盤に限らずです。

 

試合中は、技術的なことではなく感覚的なこと、プレーイメージを重視します。

 

そして、80%以上のパフォーマンスを発揮できてきたら戦術的なことを取り入れていきます。

 

是非、次の試合で意識してみてください。

 

試合序盤は体をほぐすために打ちやすいコースに打て!よいプレーイメージで感覚が戻ったら戦術を意識せよ!