元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

「どんな打点でも打てる」より「どれも同じ打点で打てる」の方が強い

今回はテニスの打点の話です。打点の話といっても具体的に「ここで打ちましょう」という話ではありません。

 

打点がどこかは自分で探してください。打ちやすいところが正しい打点です。

 

逆にいうと選手ならば、自分で探せるくらいたくさんボールを打って自己分析と改善を繰り返してください。

 

どれだけ「自分の打点」で打てているかで試合が決まる

 

試合では主導権を握る必要があります。主導権を握れている状況とは、相手より自分の方が安定した体勢でボールを打てていることが多い状況です。その結果、心理的にも優位に立てます。

 

自分の打点とは、もっとも打ちやすく、もっとも力が伝わり、もっともコートに入る打点です。そこを迷うことなく振り抜き返球できている回数で勝負の半分以上が決まります。

 

もちろん、打ったボールの質も勝負を左右するポイントですが、それに先立つものが自分の打点です。自分の打点で打てない限り、ボールの質を上げることはできません。

 

自分の打点の範囲を広げるよりも走れる範囲を広げた方がいい理由

 

ここで強くなるための取り組みには次の2つの選択肢があることがわかります。

 

  1. 自分の打点の範囲を広げて、どんな打点でも打ち返せるようにするか
  2. 分析力とフットワークを強化して、どんなボールが来ても自分の打点に入れるようにするか

 

ここでいうフットワークとは、足の動かし方もそうですが、それ以上にまず足を動かす量です。

 

もちろん1と2を両方同時にできるにこしたことはありません。それでも少しでも早く勝率を上げることを目指す場合、取るべき正しい順番があります。それが以下です。

 

  1. 自分の打点を知る
  2. その打点で打てるように分析力とフットワークを強化する(その過程で自分の打点の範囲が自ずと広がっていく)
  3. フットワークが十分強化されたら応用の打点を強化する

 

これを見て「まぁ普通そうだよね」と感じた方は少なくないと思います。

 

しかし私は、自分の打点で捕らえることにこだわってプレーしている選手をあまり知りません。人は皆、意識しなければ楽をします。

 

読者の皆さんは是非これを機に、改めて自分のベストな打点に入ることにこだわってプレーしてみてください。新たな気づきを得られると思います。

 

さて、この順番を取るべき理由は、基本から学ぶべきだからとも言えますが、私の考える理由はそれとは異なります。

 

選手はあくまでも試合で勝つことをゴールとしているため、リスクの少ないプレーを選択すべきだからです。

 

試合ではわざわざ難しいことをすべきではありません。というよりも、試合ではミスをしているとアッサリ負けるため、難しいことはできません。

 

ナダルのリターンや回り込みも同じ理由

 

それを徹底的に実践しているのが、トッププロで言えば、ナダル選手です。

 

この点はフェデラー選手とは対照的です。フェデラー選手がポジションを前に取り、ライジングで捕らえ、低い軌道で、ダウンザラインへ仕掛けることも多く選択するのに対して、ナダル選手はベースライン後方にポジションを取り、落下するボールを捕らえ、高い軌道で、クロスへの返球を多く選択します。

 

ナダル選手のそれを象徴するシーンがリターンです。ベースラインの3mほど後方に構えてファーストサーブも球威の落ちたところを自分の打点で捕らえます。

 

もちろんその分移動距離は長くなります。そしてベースライン後方から軌道が高く強いリターンを返球し、一気にベースラインあたりまでポジションを押し上げることで次のボールにも対応します。

 

もうひとつ象徴的なのがフォアハンドへの回り込みです。回り込めるものはすべて回り込んで自分の打点で打ち抜きます。

 

それも、バックハンドよりフォアハンドの方が相手に攻め込まれるリスクが少ない(=自分が攻めることができる)と考えているからです。

 

いずれも、優れたフットワークがなせる技です。逆にいえば、フットワークを強化すればリスクの少ないプレーができるようになるということです。

 

サボらない努力家が一番強い

 

ボールタッチのセンスがある選手はどんな打点でもかっこよく打ち返すことができます。しかしその分横着もできてしまいます。同様に、センスがある分努力を忘れやすいというのも悲しい事実です。

 

フェデラー選手はまさにセンスの塊です。しかし、勘違いをしてはいけません。彼は人一倍努力をしています。たとえフェデラー選手でも、そのセンスだけでは今のようにはなれていません。1%のセンスと99%の努力があったから今があります。

 

「僕は努力の道を選んだんだ」

 

いつかのインタビューでフェデラー選手本人もそう話しています。

 

フットワークをとっても、松岡修造氏が「忍者」と表現するほど素早く的確です。分析力も高く一歩目も早い。これはトレーニングを積み重ねてきた努力のたまものです。

 

センスは、強い選手になるために不可欠なものではありません。不可欠なものは、地道な努力です。

 

そしてスポーツは、楽して勝つことはできません。それはどうやっても変えることのできない自然の原理です。逆にいうと、誰よりも努力をすれば、その努力は必ず報われるのがスポーツです。

 

報われ方は様々ですが。

 

人一倍、そして一歩でも多くボールを追いかけ、自分の打点でプレーすることに、こだわれ!