フェデラー「バックハンドは両手がおすすめ」それでも本人は片手にこだわった。
昨日のウィンブルドン決勝で37歳にして素晴らしい戦いをしたスイスのロジャー・フェデラー選手が、そのすこし前、今年2019年の芝シーズンに入った頃、スポーツメーカーであるWilsonの取材に応じ、次のように話していました。
「自分の子供達には、バックハンドは両手打ちから教える」
「両手打ちの方が片手打ちよりいろいろなことができる」
それでもフェデラー選手自身は片手打ちを選択しました。今回は「こだわりが人を強くする」という話です。
両手打ちバックバンドの方が強い
小学校低学年の子供がテニスをしている姿を見たことのある人であれば誰でもわかると思います。
幼い頃は間違いなく、バックハンドは両手打ちの方が打ちやすい。片手打ちより両手打ちの方が安定しやすく勝ちにつながりやすい。
理由は簡単で、片手の筋力だけではラケットを振るのが大変だからです。
だから、「幼い頃から勝つためにテニスをするなら、両手打ちにすべき」という話は、フェデラー選手に限らず、すべての大人が考える解です。
インタビューの中でフェデラー選手も話しています。
「片手バックハンドが上手くいかず負けた試合の後、両手バックバンドを練習したことがあった」
それでもフェデラー選手はシングルハンドバックを選びました。さらにこう続けています。
「片手バックハンドは振りやすく、シンプルで美しい」
フェデラー選手がシングルハンドバックにこだわる理由はそこにあったのかもしれません。
トッププロに憧れを持ち真似をする選手の成長は早い
実は、今小学2年生の私の息子も片手打ちを選択したジュニア選手のひとりです。7才の時に片手打ちをはじめました。
3才の頃からテニスをはじめた息子ですが、やはり世界中どこを探しても3才という幼い子供にシングルハンドバックを教えは大人はいません。はじめは両手打ちでした。
その理由は、おそらくフェデラー選手が我が子には両手打ちを教えると話している理由と同じです。
成功体験がないとテニスを楽しいと感じることはできません。成功体験を得るためには片手打ちより両手打ちです。
息子の場合、7才になった月にオレンジーボールを使った小さな試合に挑戦しています。
その当時はフォアハンドより両手打ちバックバンドの方がいいのではないか?と思うほどで、3回目の挑戦で準優勝しました。
そして、4回目の挑戦の前、「次こそ優勝だ!」というこのタイミングで「片手打ちに変える」と言い出します。
理由は、フェデラー選手への憧れです。
「こうなりたい!」その気持ちの量で将来どれだけ強くなるかは決まる
当然ですが、片手打ちをはじめたことで息子のテニスレベルは総合的に見て明らかに低下しました。
それはもう、指導する立場としては大きな葛藤との戦いです。
「両手打ちの方が勝てるのに」
しかし、目先の勝利よりも私が大切にしているテニス指導における方針に次があります。
「本人の道は本人が決める」
これは、大学の選手たちに対しても同じです。
子供や学生たち自身が決めた道をより速く走れるように支援する。それが私の役割です。私が前で手を引くのではありません。後ろから背中を支え、たまに軽く押す、その程度です。
もちろん、「こうこうこういう理由で、こっちの方がゴールに対して近道だと考えている」という私の意見は伝えます。その上で、最後は本人が決める。
それが、モチベーションの源となります。
息子がバックハンドストロークを両手打ちにするか、片手打ちにするかという話の場合、息子自身も両手打ちの方が今は返球できる範囲が広いことはわかっています。
それでも片手打ちを選びたい、かつ、誰にも負けたくないのです。
だから、それまで以上にたくさんボールを打とうとします。バックハンドへのボールを何度も要求し、何度も何度も打ちます。
そうなれるのは、なりたい自分が強く明確な形で存在するからです。息子の場合は何より、フェデラー選手のようになりたいのです。
3回目の挑戦が終わり、4回目の挑戦までは2ヶ月ありました。その間、フェデラー選手の動画を観ながら片手打ちを研究し続け、息子は迷わず片手打ちで試合に臨み、初優勝してみせました。
実際のところ、その日のバックハンドはスライスでの返球がほとんどとなっていましたが、しっかり本番で使い(両手打ちを一度も使わず)、優勝までしてしまうあたり、大した奴だと、我が子ながらに思ったことを覚えています。
今はすっかりワンハンダーとなり「ティエムのように!見た目はフェデラー!心はナダル!」そんな選手をイメージしながら日々ボールを打っています。
大学のリーグ選手の場合、そのなりたい選手像は、一年後の選手像でもいいでしょう。
あなたは一年後、どんな選手になっていたいですか?チームを引っ張るエースでムードメーカーですか?それとも、確実に一勝をもぎ取るダブルスのスペシャリストですか?それは、プロ選手でいうと誰のようなイメージですか?
その選手像を目指して、一年間夢中でテニスをすれば、それはそれは、確実に強い選手に生まれ変われます。
だまされたと思って、具体的なトッププロの選手像を追いかけ、とことんボールを打ってみてください。
「なるほど。やってみようかな」と思っていただけた方は、Twitterでシェアいただけるととても嬉しいです。シェアいただいた方には必ずお礼の返信をさせていただきます。
最後に、フェデラーとジョコビッチのプレーを分析した次の記事も、よければ参考にしてみてください。
それではまた、きっとどこかで。