元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

結局のところ体に染み付いたショットの質をどれだけ高められているか。

全仏オープンナダル選手が相手を圧倒しているのを観ていて、これに尽きるなと思わされたのを覚えています。

 

ジョコビッチ選手を観ていてもいつもそう思わされます。

 

「打てばボールはそこに飛んでいく」

 

そういったショットの質。もちろん狙っているわけですが、ラインの内側20cm以内に打ち込んでいる回数が他の選手と比較して異常に多い。

 

それを成し得る理由が「狙っているから」というのはどうしても疑問が残ります。

 

それができる理由の7割は「体が覚えているから」でしょう。残りの3割は「その時、そこを狙っているから」と言えるかもしれませんが。

 

その試合に勝つためには、結局のところ体に染み付いたショットの質をどれだけ高められているか。この部分で相手よりどれだけリードできているか。それが最も重要な要素です。

 

その差をつくれていれば試合を有利に進められることは間違いありません。

 

心技体+頭はいずれも等しく重要か

 

「いやいや、頭を使えばひっくり返せる」そう考える人もいるでしょう。私もそう考えている部分もあります。

 

しかし、技術力にある一定の差がある場合、それは難しいのも事実です。

 

そもそも、当たり前ですが、どんなにテニス脳が優れていても、ボールを打つことが出来なければ勝てません。

 

言うまでもなく、プロでない限り、ボールを打つ時間を削ってまで、テニスの本を読んだり、戦術について考えを巡らせる必要はありません。

 

ボールを打てない時間に仕方なく、しかし前向きに、テニスの本を読むというスタンスの方が正しい。

 

特に学業やアルバイトにも励まなくてはいけない学生テニスプレーヤーならなおさらでしょう。

 

これは「何も考えなくていいからとにかくボールを打て」と言っているわけではありません。頭は非常に重要です。必要なことは「ボールをとにかくたくさん打ちながらたくさん考える」ということです。

 

また、技術で圧倒していれば心が乱れることもなくなるでしょう。技術で圧倒しているということは、それに必要な身体が備わっているということでもあります。

 

何よりも先立つものは技術なのです。心と身体と頭はそれと一緒に鍛えるものです。

 

もちろん、相手を技術で圧倒できない試合の方が多いので、心と身体と頭も重要です。

 

結局勝つためには誰よりもたくさんボールを打つしかない

 

コーチという仕事をしていると、たまに「楽して強くなりたい」と考える人に出会います。「コーチが私を上手くしてくれる」と。しかし残念ながらそれは違います。

 

コーチという仕事は、尽きるところ選手の頭の強化です。頭の強化といっても教え込むのではありません。インプットはしますが、それは選手が自分で考える力を身につけるヒントにすぎません。コーチは、選手が自分でテニスを正しく研究していける力を身につけられるよう指導することがミッションです。

 

どんなに良いコーチが付いて、どんなに良いインプットがあっても、選手がボールを打たない限りそれは活かされません。

 

逆に、コーチがいなくても、自分でいろいろと研究しながら、誰よりもボールを打っている選手はどんどん強くなります。

 

結局は、どれだけ真剣に、どれだけボールを打ってきたかなのです。

 

ボールを打たずして強くなることはありません。同時に、真剣に、考えながらボールを打った分だけ強くなります。

 

これは、世の原理原則です。

 

例えば、フェデラー選手に個人的なアドバイスをもらえば、感激もあるのできっとそれは上手くいきます。「あ、ホントだ!上手く打てるようになった!」そう感じます。しかしそれは、その時だけです。その感覚を忘れない内にたくさん打ち込まないと、その技術は定着しないのです。

 

あなたが勝ちたいなら、誰よりもボールを打つしかありません。

 

さらに何年も積み重ねた選手が強い

 

そしてそれは、積み重ねです。何年もそれを積み重ねてきた選手が本当の強さを手に入れることができます。

 

10年間本気で積み重ねてきた選手に、1年間本気で積み重ねてきた選手が勝てる可能性は、限りなくゼロに近い。

 

ただ、3年間本気で積み重ねれば、勝てる可能性は大きく高まるとも思います。

 

勝てない理由を知って諦めるか挑戦を続けるか

 

このように原理原則の話をすると、勝つためにやっている選手でテニスをはじめるのが遅かった人は、なかなか勝てない理由ははじめたのが遅かったからと知り、諦める人も出てくるかもしれません。

 

しかしそれは違います。

 

人を成長させるのは、本気の挑戦(=没頭)を続ける以外ありません。例え当初思い描いていたようには勝てなくても、その経験で必ず、人として大きく成長できます。

 

これこそが、競技スポーツを勝つために本気で戦うことの意義です。

 

本気で挑戦すれば、負けても人生にはプラス、勝ったらもっとプラス。

 

躊躇することはありません。テニスが好きなら、テニスを本気でやりましょう。その経験は必ずあなたのプラスになります。

 

とことんボールを打って、体に染み付いたショットの質を高めるべし!