元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

トップスピンを打つ時も、フラットのようにボールを潰しながら回転をかける。

先日、カナダのモントリオールで開催されたATP1000のロジャーズカップを現地観戦してきました。

 

ひと席5万円もするセンターコートの前から3列目の席をおさえて。奮発した理由は、最大の目的がフェデラー選手を観ることだったからです。しかし、残念ながらフェデラー選手はあのウィンブルドン激闘の疲れを癒すために欠場でした。

 

それでも、ティエムvs チリッチ、ハチャノフvs オジェ・アリアシムの試合を観戦することができました。

 

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特にこの日はティエム選手が、この4人の中でも圧倒的に質の高いプレーを披露してくれたので、感動しっぱなしでした。さすが世界ランキング4位。

 

試合後は、サインにセルフィーまでゲットできたので十分元を取ることができました。

 

もちろん、テニスをする息子にもいい刺激になったのは言うまでもありません。

 

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トッププロの技術レベルを正確に把握する唯一の方法

 

自慢話はこれくらいにして、間近で観るトッププロのプレーは圧巻です。

 

言うまでもなく、テレビ越しに観ているものとはまったく違うスゴさを感じとることができます。

 

選手との距離が近ければ近いほどそれは大きくなります。プロの実力を正確に把握する方法はこれしかありません。テレビ越しのプレーではそれを正しく把握するのは不可能です。実態は想像以上、桁違いです。

 

テニスファンはよく冗談で「ジョコビッチナダルフェデラーの3人は人間じゃない」と言ったりします。人間を超えた超人。つまり、ティエムや錦織は人間最強だと。

 

しかし現実は違います。トップ50はみな人間ではありません。

 

そのことを正確に理解できるのが間近で観るという経験です。これはプロを目指す選手やプロを育てたいコーチは必ず経験しておかなくてはいけないことです。

 

理由は、この経験により目指すべき自分の将来像が具体化されるからです。

 

もちろん、プロを目指していなくても、本気で勝つためにテニスをしている学生プレーヤーたちにもおすすめです。

 

間近で観れば学べることも桁違い

 

当然、生で観たからといってそれをすぐに真似できるわけではありません。そもそも持っている身体が違います。彼らのスーパーショットは真似しようと思ってすぐできるものではないのは明らかです。

 

それでも、彼らが実践する「基本」はとても参考になります。そこは真似すべきです。

 

たとえ無意識でいたとしても、間近で観れば多くのことを肌で感じ取り、多くのことを学び取ることができます。それは必ずその後の自分のプレーに活きてきます。

 

とは言っても、例えばトップ20以内の選手の試合を間近で観ようとすると安くても1万円はします。

 

なのでおすすめは、大会初日の一番安い席を購入し、試合前の練習を視察することです。試合直前なのでしっかり強打もしてくれます。それをコートサイドで、本当に間近で観ることができます。

 

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ちなみに、残念ながら楽天ジャパンオープンはこの距離で練習を見学することはできないようです。

 

モントリオールで私が練習を見学することができた選手は、ナダル、ズべレフ、モンフィス、シャポバロフの4選手でした。

 

彼らを間近で観て特に印象に残ったことが次の3つです。

 

これらはすべて基本なので、勝つためにテニスをする学生プレーヤーは強く意識して(目指して)取り組むことをおすすめします。

 

❶ ブレない打点と軸

 

まず、深いボールが来ても、浅いボールが来ても、崩されてどんな態勢になっても、その態勢でもっともボールに力を伝えることのできる打点でボールを捕えているという点です。

 

同時に、打点の前後、テイクバック完了からフォロースルー完了までの間、まったく身体の軸や顔がぶれません。

 

圧倒的にパワー伝達に無駄がないのです。

 

だからモンフィス選手などはふざけながら打っているのにスゴいボールを打ったりします。

 

ナダル選手などはその上練習でも気持ちを込めて打つので相手のヒッティングパートナーはもう大変です。

 

選手は相手のいるところに打ってあげています。少しでも相手を動かしてしまうと返ってこないので。

 

❷ しなるような身体

 

次が、「運動連鎖」が完璧という点です。そのために動作が美しく、しなっているように見えます。

 

運動連鎖とは、例えば、右利きのフォアハンドの場合、テイクバックが完了し下半身のタメをつくってから、まず軸足である右足が地面を踏みしめ、次に膝が前を向きはじめ、次に腰が前を向きはじめ、次に胸、肩、肘、手首の順に動き、最後にラケットヘッドが出てきてボールを捕らえるといった動作のことです。

 

それぞれのパーツの動きが足されることでスイングスピードが最大化し、爆発的なパワーを生みます。

 

動く歩道の上に動く歩道をいくつも重ねて、その上を歩けば車と同じくらいの速さで歩くことができるのに原理は似ています。

 

もちろんストロークを打つ際はそれを一瞬の間に行うのですが、トッププロたちはこれがまた完璧なのです。ここにもまったく無駄がない。ブレない上に運動連鎖が完璧なので本当に美しい。

 

運動連鎖は、プロでなくてもみな無意識にやっていることです。運動学習で言う「自動化」された動き。「この順番で動け」と脳が指令を出して実践しているわけではありません。

 

それでも、その完成度を上げる過程では、適度な脱力と運動連鎖の順番を意識することはプラスに働くでしょう。

 

❸ 打球音

 

最後が、打球音です。前述の通り、打点が完璧で、運動連鎖が完璧なため、打点では爆発的なエネルギーが生まれます。

 

その爆発音がスゴい。それも、何度も何度も。当たり前のように。ボールが可哀想になるくらい。そしてそのボールは当たり前のようにコート内に突き刺さります。

 

フラットはもちろん、フラットドライブも、トップスピンもほぼ同じような爆発音がします。

 

この音は、ラケットでボールを潰している時に発せられます。

 

つまり、これらの3つのショット、フラット、フラットドライブ、トップスピンでは、フラット同様にボールを潰して打っているということです。

 

当然、これを成し得るためには、前述の最適な打点とブレない軸、運動連鎖に加え、適度な筋力も不可欠です。

 

それでも、例えば、17歳以上の男性であれば、プロでなくてもボールを潰して打つだけの技術とパワーを備えることは可能です。

 

是非、皆さんも、トッププロから学べる基本を徹底的に磨き上げて、強い選手を目指してください。

 

プロからは基本を学べ!学生プレーヤーならボールを潰して打てるようになれ!