元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

相手がいないところに打つのがテニス!ではない。

以前、主にシングルスを想定して、試合序盤は「打つべきところ」ではなく「打てるところ」に打てと書きました。

 

そこでは、打点にアジャストしきれていない序盤は、オープンコートを狙って技術的に難しいストレートを選択してミスすることを減らすべき。リスクの少ない順クロスまたはセンターに打ち返すことで、まずはミスを減らし、身体をほぐして、打点をアジャストしていくことを考えるべき、と書いています。

 

今回はこの話をさらに掘り下げることで意識改革していただければと思います。

 

また、他の記事ではポジションごとの選択すべきショットがわかるだけでプレーの質は上がると書きました。

 

そこではミスの原因は次の2つと書いています。

 

  1. 技術的なミス
  2. 誤った状況判断によるミス

 

ほとんどのテニスプレーヤーは、ミスの8割を技術的なミスと考えます。

 

「(ミスをした)このショットが打てるようになるために、もっと練習しなくては」

 

そう考えること自体は悪いことではありません。

 

しかし、実は、技術的なミスの多くは、誤った状況判断によるミスとも考えることができます

 

そのことに気づけている選手の方がミスを減らせるため、早く勝率を上げることができます。

 

これだけだとピンとこないと思うので、具体的な例を挙げて説明します。

 

ストレートに打つ技術が低かったのか、今ストレートに打つべきではなかったのか

 

繰り返しますが、クロスよりもストレートの方が技術的難易度は高いです。これは万人に共通した事実です。理由は言うまでもなく、ベースラインまでの距離が短い上にネットも高いためです。

 

さて、試合中、クロスから飛んできたボールをストレートに打ち返した結果、ボールが流れてサイドアウトしたとします。

 

この時あなたは、

 

① 技術的なミスと考えますか?

 

それとも、

 

② 自分のプレーの質がまだストレートに切り返せるほど高められていないことを考慮できなかった、誤った状況判断によるミスと考えますか?

 

あるいは、

 

③ 自分の実力(技量)を正確に把握できていないために犯した誤った状況判断によるミスと考えますか?

 

①のように技術的なミスと考えることも、②③のように誤った状況判断によるミスと考えることもできます。

 

いつも技術的なミスと判断していたら、それが打てるようになるまでミスをし続けることになります。

 

誤った状況判断によるミスと判断していれば、そこで順クロスを打つようになり、ミスは減ります。

 

他にもわかりやすい例をあげるなら、ドロップショットでしょう。ドロップショットをネットにかけてしまった時にどう考えるかです。

 

ミスの多くは、技術的に難しいプレーを選択した時に出ます。自分のプレーを振り返り、そのことを理解してください。それは、プレーの質を上げる大きなチャンスにかわります。

 

オープンコートにすぐ食いつかない

 

例えば、ストレートに打たず、順クロスに打つという行為は、相手のいる方へ打つことを意味します。

 

「テニスは相手がいないところに打つスポーツではないか」

 

と考える人がいます。それは違います。

 

テニスは、最後に相手がいないところに打つスポーツです。いないところにたくさん打てばいいスポーツではありません。

 

ラリー中によくミスをする選手は、少しオープンコートが作れただけですぐにそれに食いついてしまう選手であることが少なくありません。

 

そしてそれは、「テニスは相手がいないところに打つスポーツだ」と考えているからです。

 

まずは、その考えを改める必要があります。意識改革が必要です。

 

相手がいる方に打っても相手を崩すことができます。ストレートに配球しなくても相手を崩すことができます。

 

ストレートは相手を崩し、チャンスボールを作れてから打つ

 

ラリー中、チャンスボール(ストレートに簡単に打てるボール)を作れるまでは順クロスにしか打たないと決めていても、相手を崩すことは可能です。

 

順クロスといっても、センター寄りから角度をつけたアングルまで、浅いボールから深いボールまで、速いボールから遅いボールまで、高い軌道から低い軌道まで、ベーシックな打点からライジングまで、スピンからフラット、スライスまでと様々なショットが打てます。

 

自分が習得している範囲を活用することが前提ですが、順クロス縛りをしたとしても、それらを駆使して崩すことができます。

 

基本は、ボールを深く打ち込んでチャンスボールを作ることでしょう。

 

この、リスクがもっとも低い戦術をベースに試合に臨むかいなかが、勝率に大きく影響します。

 

そのことを理解し、是非プレーに取り入れてみてください。

 

相手がそこにいても順クロスで崩せ!ストレートは完璧に崩してからの選択肢のひとつだ!

 

もちろん、相手との実力差にもよります。また、3セットマッチの始めから最後までそれをやり続けるわけにはいきません。それでも、その戦術をもっとも多くとるべきという点は、ほぼすべての選手、ほぼすべての試合に言えることだと思います。

 

次回は、この戦術を起点に、チチパス選手を倒したドイツのストルフ選手が取った単純で明解で基本的な「3セットマッチの戦略」について書きたいと思います。