3セットマッチでプロも実践するシンプルで効果的なシングルスの戦略事例。
前回の記事「相手がいないところに打つのがテニス!ではない。」の最後に予告した通り、今回はトッププロも実践するシングルスの戦略、3セットマッチ編をお届けします。
これはあくまで一例です。これを参考に、自分のプレースタイルにマッチした戦略を構築してみてください。
ストルフ選手の戦略
ドイツのストルフ選手をご存知でしょうか。日本のデ杯代表メンバーのマクラクラン勉選手が有名になりはじめたころのダブルスのパートナーがストルフ選手です。
最近はシングルスでも活躍中で、2019年8月27日現在の世界ランキングは37位、7月にはキャリアハイの33位を記録しています。
スピードのある力強いサーブとストロークが持ち味です。もちろんダブルスで鍛えてきたネットプレーも武器のひとつです。
今回紹介する戦略は、そのストルフ選手が2019年のATP1000シンシナティ2回戦、チチパス選手を相手に実践していたものです。
この試合、フルセットの末、ストルフ選手は格上で当時世界ランク5位のチチパス選手を撃破しています。
第1セットは徹底的に順クロス
この試合では、ストルフ選手はセット単位でやることを明確に変えていました。しかもその内容は単純明解です。
このブログでも再三伝えている「まずはリスクの少ない順クロス」。第1セットはこれを徹底していました。
どんな場面になっても、打つコースはほぼすべて順クロス。おそらく9割かそれ以上が順クロスだったと思います。
そのため、だいたい先にリスクをとることになるのはチチパス選手でした。チチパス選手がストレートに打つまでストルフ選手はコースを変えることがありません。
そのため、先にミスを誘うことができます。
ちなみに、ストルフ選手は前述の通りハードヒッターです。そのため、ミスが少ない選手ではありません。
だからこそ、第1セットは徹底的に技術的に難易度の低い順クロスへ打つという戦略はとても合理的と言えます。
さらに、ハードヒッターであれば、例えそこに相手がいたとしても、球威で相手を崩すことができます。
この日は、強く安定したプレーが持ち味のチチパス選手でさえ後手後手となる展開を、第1セットでしっかり演出することができていました。
第1セットはこの戦略が功を奏しストルフ選手が勝ち取ります。
第2セットは早めにストレート展開
第1セットに上手くいった戦術を継続するという選択もありますが、相手は第1セットを振り返り、何がいけなかったのか、次はどうすべきかを明確にして次のセットに臨んできます。
同じ手でいくと第2セットは取り返されるということは少なくありません。
そこでストルフ選手は、第2セットに入るとラリーの早いタイミングでストレートにボールを展開するようになります。
第1セットを取られて「よし、ここから挽回だ」と気持ちを切り替えて臨んだチチパス選手の出鼻をくじきます。
これまで散々順クロスを打たれていたため、ダウンザラインのボールへの反応が遅れ、後手後手の展開が続きます。
ストルフ選手の身体も十分ほぐれているため、ダウンザラインの精度も高い状態が保たれます。
勢いそのままに先にブレイクし、マッチポイントを迎えます。しかしここでチチパス選手の驚異的な粘りでブレイクバックを許し、タイブレークの末、紙一重の差でこのセットをひっくり返されてしまいます。
第3セットは駆け引きの中で臨機応変に
当然、ここまでくると試合はどちらに転んでもおかしくありません。
いや、むしろマッチポイントを逃してのファイナルセット突入はストルフ選手にとっては嫌な流れです。それでもストルフ選手は冷静でした。
第3セットは順クロスとストレートを駆け引きの中で適切に打ち分けます。その割合は以下のイメージです。
セット = 順クロス:ストレート
第1セット = 9:1
第2セット = 7:3
第3セット = 8:2
さらに、第3セットではダブルスで培ってきたネットプレーの量も増やします。
このように、セット単位で異なる戦術をとることで相手に的を絞らせず、相手の実力を封じ込めることができます。
ちなみに、この試合、ストルフ選手はファーストサーブのコースもメリハリをつけていました。
第1セット = 徹底的にワイド
第2セット = センターを混ぜる
第3セット = 臨機応変
第1セットはまさに、以前の記事「ナダルも8割クロス?まず習得すべき基本戦術!シングルス編」に書いた基本戦術を徹底していました。
是非みなさんも、この戦略を次の試合で実践してみてください。
また、この話をヒントに、自分のパフォーマンスが最大限発揮される3セットマッチの戦略を確立してください。
ポイントは、リスクを取らず、相手に的を絞らせない!