元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

テニスのダブルスはポーチが命。最後の最後は一か八かで思い切るしかない。

テニスのダブルスでポーチが命である理由は、いうまでもないと思います。相手にプレッシャーを与えられず、のびのびとプレーをさせてしまうからです。

 

相手の気持ちを考えるとわかりやすいです。こちらがポーチをすると相手は打てる範囲がどんどん狭くなる。コートが狭く感じるといってもいいでしょう。

 

これにより、試合を優位に進めることができるようになります。

 

f:id:manymanythanks:20200307005546p:plain

 

今回は、このポーチの考え方についてまとめます。

 

一般的に、レベルが上がればサインプレーやポイント前の意思疎通は必須となります。それはボールスピードが速いため来てから反応するでは間に合わないことが増えてくるからです。

 

ただ今回は、話を難しくしたくないので、アイフォーメーションやサインプレーではなく、ペアとの打ち合わせをせず、ベーシックな考え方に基づいてプレーに入るケースを想定します。

 

目次

 

ストレートは抜かれてもいいもの

 

まず、はじめに、重要なマインドセットがあります。それが「ストレートは抜かれてもいいもの」と考えることです。ストレートに抜かれてポイントを落とす回数より、ボレーしてポイントを取れている回数を多くすることを考えるのが前衛の基本的な考え方です。

 

一番ダメなのは、結果的に触る回数が少なくなることです。

 

f:id:manymanythanks:20200307005755p:plain

 

技術的にもっとも重要なことは「動き出しのタイミング」 

 

「抜かれてもいいといわれても、抜かれたくない」と思う人も多いでしょう。そのために必要なことが、瞬発力を高めた上で、動き出しのタイミングを極めることです。

 

動き出しは、早すぎても、遅すぎてもいけません。このタイミングは相手の技術力によっても変わってきます。相手が格上になればなるほど、動き出しを遅らせる必要があるため、より瞬発力が求められます。

 

ポーチは、相手の打点よりも前に動き出すものです。あとはどれくらい前に動けるか。それは、その相手と対峙しながら、何度もトライして探るものです。「相手がこうした時に動く」という基準はありません。

 

ポーチ判断4つの要素

 

さて、ここからが本題です。前衛がポーチを判断する要素。それは次の4つです。

 

  1. 味方のサーブコース
  2. 相手の打点時のラケット面の向き
  3. 相手の心理
  4. 一か八かの勝負


なお、2~4はサービスリターン後の3球目ポーチに限らず、後衛同士のラリー中のポーチ判断もこれをヒントに瞬時に行います。

 

1. 味方のサーブコース

 

サービスゲームの基本は、センターに強いサーブからの、逃さずポーチです。ファーストサーブでは、まずはそれを多用します。

 

つまり、自分が前衛の時、味方のサービスヒット音直後に、相手リターナーがセンターに飛びつく体勢になっていれば、その正面に入るように、自分もセンターに身体を寄せてポーチします。

 

f:id:manymanythanks:20200307010455p:plain

 

ワイドサーブの場合は、相手の心理を読めている時か、一か八かの賭けに出る時にポーチするものと考えてください。

 

2. 相手の打点時のラケット面の向き

 

サーブやストロークで相手を追い込めていればいるほど、相手の返球コースを絞りやすくなります。そこは逃さずポーチです。

 

また、コースを絞り込むポイントは、相手の打点時にラケット面の向く方向を予測するということです。

 

つまり、「相手のこの打点の入り方ならボールはこの範囲に飛んでくる」という分析ができる力を意識的に高めていくのです。

 

これは、やっていれば誰でもできるようになります。

 

逆にいうと、仮に体勢が崩せていなくても、面の向く方向が予測できればポーチできます。

 

ただし、基本的には、相手が余裕をもって打点に入れているときは返球コースを絞ることは不可能となります。

 

そんな状況にもかかわずポーチを決める選手は次の「相手の心理」や「一か八かの勝負」で出ています。

 

3. 相手の心理

 

相手の心理と聞くと難しく聞こえるかもしれませんが、要は、相手リターナーがこの場面でリスクを取るか取らないかを考えるということです。

 

一般的に、クロスへ返球する方がネットも低く、アウトまでの距離が長いため技術的に容易です。ストレート方向はその逆の上、ボレーヤーがいるのでリスクが高いと考えられています。

 

わかりやすい例は以下です。

 

ファイナルセット5-4の40-30、自分たちのサービスゲームでマッチポイントという場面。ポーチに出ますか?

 

この時、相手の心理を考えます。大学リーグ選手の場合、まず、相手はビビったりしません。開き直ってファイトしてきます。ただし、サーブが入ってそれをしっかりリターンできないと負けます。もっとも簡単なコースに、質の高いボールを打つことを考えます。つまり、クロスに強くしっかり返球してくる確率の方が高いと考えることができます。

 

だから、そのポーチを狙うことを考え、行くと腹をくくって迷わず行きます。

 

もちろんこの時、相手はリスクを取ってストレートに打つ可能もあります。また、動き出すタイミングが早くなり過ぎれば、ストレートに射抜かれるかもしれません。しかし、相手がストレートに打った時点で、超難しいことをやらせることに成功したと考えます。この時点で成功です。

 

その結果、ミスをしてくれれば狙い通りです。もし、ミスせず、ストレートに打ち込まれたら、この極限状態で超難しいストレートを成功させた相手を褒めます。悔やむ必要はありません。すぐに次のポイントをどうやって取るかを考えます。

 

このように、相手がどこに何を打つかを予測する。それが相手の心理を読むということです。

 

そして、心理を読みやすい状況にあるか否かは自分の手数で決まります。自分がボレーできていれば読みやすい状況になります。

 

4. 一か八かの勝負

 

つまり、時にはストレートパスというリスクを取って、一か八かでポーチを決め、相手を動揺させることで、相手の心理を読みやすい状況に変えていくといった駆け引きが必要となります。

 

ここが勝負を決めます。

 

そして最後にとても重要な話をします。

 

これまで書いてきた1〜4は、上から順に習得しやすいものとなっています。まずは1、次に2を極めていくことになります。

 

しかし、ここに落とし穴があります。

 

1と2を極めた段階は、格上の相手に対しては逆に手が出せなくなります。なぜなら、各上の相手は、いとも簡単にこちらの動きの逆を突いてくるようにしか思えないからです。

 

つまり、3と4こそポーチの本質であり、最後の4「一か八かの勝負」、これが勝敗を分けます。

 

もう一度いいます。一番ダメなのは、結果的に触る回数が少なくなることです。

 

最後は、一か八かでもいいから勝負に出るべきです。前衛は、暴れるべきです。

 

それではまた、きっとどこかで。