元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

シャポバロフのようにYouTubeを日常的に観てプロの真似をせよ!

今話題の若手選手、カナダの20歳、デニス・シャポバロフ選手も次の動画で、「ジュニアの頃からいつもロジャー・フェデラーを観て、テニスコートではロジャー・フェデラーを真似していた」と話しています。

 

 

さて、これまでも試合で勝てる選手になるために必要なことをいくつか紹介してきました。その核となるポイントは優先順に次の2点だけです。

 

  1. 圧倒的な試合経験
  2. 圧倒的な練習

 

こう書くと笑ってしまうくらい当たり前のことですが、目標を達成できる人とできない人の差は、だいたいこの当たり前のことができているか否かにあります。

 

何よりもまず選択すべきは「量」です。量をこなせば自ずとその活動の「質」も高まります。

 

また、質を上げるためにあるとなお良いものが以下と書いてきました。

 

  • 地頭の良さ

 

これがあると目標達成までにかかる時間をさらに短縮できます。

 

しかし、地頭は7歳以降育たないとも書きました。なので今回は、これと同じくらい有効と私が考えている、誰にでもできる以下について書きたいと思います。

 

  • 日常的にYouTubeを観てプロを真似る

 

はい。冒頭のシャポバロフのようにです。もう少し具体的に書くと以下です。

 

  • 日常的にATPまたはWTAのハイライト動画をチェックして、お気に入り選手を見つけ、自分がプレーする時にその選手の雰囲気を真似る

 

この先を読み進める前に、とりあえず以下のサイトをブックマーク、チャンネル登録しましょう。

 

 

要はプロのプレーイメージを頭の中に持つということです。日常的にそれに触れ、それを真似するのが最も早い上達手段と私は考えています。

 

その根拠を簡単に説明します。

 

人間は皆、観て、真似るのがもともと得意

 

観て、真似して、できるようになる。これはもともと人間が得意とすることです。この能力は、すべての人間が生まれながらに持っています。

 

笑うのも、食べるのも、話すのも、拍手するのも、歩くのも、走るのも、階段を上り下りするのも、すべて人間は、見て、真似して、できるようになります。

 

これは、育児経験の中で子どもを観察すれば誰にでもわかることです。

 

観たこともやったこともないことを言葉で説明されても皆できない

 

また、これまでのコーチ経験から確信していることがひとつあります。

 

「わからないからコーチが言う通りにやろう」と考えている人はなかなか上達しません。

 

なぜなら、それをたくさん観たりやったりという経験がない限り、コーチが言葉にしたそのアドバイスをコーチのイメージしている動作に落とし込むことができないからです。

 

「教えてもらえば上手くなる」というのは幻想です。

 

よく「言われたことが言われたように出来ない」と嘆く人がいますが、それはセンスがないからではなく、経験がないからです。

 

逆に、「わからないから上手なあの人がやっているのを見よう見まねでやってみよう」と考える人はどんどん上達します。

 

繰り返しますが、人はいろいろやってみるということを繰り返し経験してはじめて、コーチが言っていることをイメージしたり、実行できるようになります。

 

なので、「まず教えてもらう」ではなく「まずやってみる」という人の方が早く上達します。

 

慣れれば誰にでもできます。慣れるためにはたくさんやる以外方法はありません。

 

運動学習の3つの段階ごとに効果的なインプットは異なる

 

もう少し専門的な話とからめてYouTubeの必要性を説明します。

 

理学療法士などの専門家はある運動を習得することを「運動学習」といい、それには次の3つの段階があります。

 

  1. 認知段階
  2. 連合段階
  3. 自動化段階

 

この段階を「バックハンドストロークを打てるようになるまでのステップ」に例えると以下です。

 

  1. バックハンドストロークがどういったものかを知り挑戦する
  2. 技術的なポイントを意識しながらバックハンドストロークを打てるようになる
  3. どんなボールが来ても無意識にバックハンドストロークを打ち返せるようになる

 

試合に勝つことをゴールとする選手(とその指導者)にとって重要なことは、この3つの段階ごとに効果的なインプットが異なるということです。

 

1. 認知段階に効果的なインプット

 

この段階では、言葉による技術的なインプット、説明やアドバイスはほぼ機能しません。むしろ混乱をまねき、不自然な動作となり、遠回りすることになります。

 

例えば、「ラケットをもっと下から上に振り上げよう」「手首を柔らかく使おう」「後ろ足から前足に重心を移しながら打とう」といったものが言語による技術的なアドバイスです。

 

この段階で必要なインプットは、言葉ではなくイメージです。

 

上手な人がどうやっているか観察することです。観察した結果を言語にするのではなく「こんな感じ」と雰囲気を真似します。

 

もちろん、自分が真似するときは、自分のレベルに合わせて動作スピードは落とします。

 

つまり、この段階でYouTubeを活用することは非常に効果的といえます。

 

観るべきは、言語によるレッスン動画ではなく、デモンストレーションによるお手本動画です。

 

学生テニスプレーヤーの場合はそれがプロの試合のハイライト動画でも問題ありません。

 

2. 連合段階で効果的なインプット

 

この段階は、ある程度打てるようになる前と後でも最適なインプットが異なります。

 

2-1.ある程度打てるようになる前

 

この段階は成功も失敗もたくさん経験をしてきているので「こうするとこうなる」ということがわかってきています。

 

例えば、色々な球種、トップスピン、フラット、スライスなどを試しているレベルもこの段階です。

 

ここまでくると、第三者からの言語による技術的なアドバイスも効果的に働くようになります。これを「外的フィードバック」といいます。

 

ただし、ここで注意しないといけないことが2つあります。

 

ひとつ目は、指導者からのアドバイスよりも自分の積み重ねてきた良い感覚を大切にするということです。

 

個人差はあれど、人はいろいろと試す中で自分なりのコツを見出します。その「そうか、こうすればいいんだ」を大切にします。これを「内的フィードバック」といいます。

 

つまり、外的フィードバックよりも内的フィードバックを大切にするということです。

 

ふたつ目は、必要以上にアドバイスをもらいすぎないということです。自分がアドバイスを消化できる量は決まっています。

 

言われたことを試す際も1つずつ試します。同時に3つのことを意識するのは不可能と考えます。

 

さらに、やってみてピンとこなかったアドバイスはどんどん捨てます。一般的な正解や指導者にとっての正解と、あなたにとっての正解が異なることはよくあります。

 

外的フィードバックはもらいすぎたらどんどん捨てるようにしましょう。

 

2-2.ある程度打てるようになってから

 

ある程度打てるようになったら後は打つ量を増やします。カラダが慣れるまでひたすら細胞に叩き込み、無意識に打てるレベル(自動化)を目指します。

 

この段階では再び外的フィードバックが不要となります。イメージによるインプットを続けながら、それを真似する中で、内的フィードバックをシンプルにしていきながらひたすらアウトプットを続けます。

 

3. 自動化段階で有効なインプット

 

この段階は、もう無意識に打てているので、強化すべきはショットの精度です。より安定した、より強いボールを、より厳しいコースに打てるようになることを目指します。

 

ショットの精度は、引き続き打つ量を増やすなかで強化していきます。それも、言語で考えて狙うのではなく、感覚でライン側を狙い続け、打てば勝手にそこに飛んでいくよう身体にすり込んでいきます。

 

言うまでもなく、外的フィードバックは不要です。

 

言語による技術的なアドバイスを必要とする期間はわずか

 

以上のことから言えることが、「ここをこうした方がいい」といった技術的な指導が必要な期間はほんのわずかということです。

 

そこを理解していないといつまでたっても自動化できない上、練習はたくさんしているのにいつまでたっても試合に勝てない選手になってしまいます。

 

逆に、よいプレーイメージを持って、フォームをコロコロ変えることなく、どんどん自動化していきましょう。

 

ちなみに言うまでもなくYouTubeは、運動学習に限らず、戦略・戦術の学習、ラリー展開のイメージを持つためにも最適です。

 

だから、日常的にATP・WTAはチェックせよ!

 

最後にひとつ注意です。

 

前述のバックハンドストロークが打てるようになる話は練習と試合で段階がズレます。

 

練習では自動化段階にいるのに、試合になると連合段階に落ちるということはよくあります。

 

なので、練習で自動化できてからはじめて試合に出るという考え方は間違っています。

 

以前、「試合に強い選手は「練習よりも試合」をしている、知っている」でも書いた通り、認知段階から試合は経験した方がテニスの本質を理解できるようになるので勝てるようになるまでのスピードを上げることができます。

 

試合でも、自分のレベルにあった動作スピードでプロのイメージを真似せよ!