元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

「勝つイメージ」を持てていない選手はまず勝つ経験をつくるべき

以前の記事にも書きましたが、テニスに限らずスポーツには、持力(じりょく)と実力が存在します。そして、実力をどこまで高められるかは技術面よりもメンタル面や思考力で決まります。そのため、技術面で格上の相手に勝てることがあるというのがテニスの面白いところです。

 

しかし、自分が「勝つイメージ」を持てていないまま試合に臨んでいる選手がいるとしたら、その選手が格上の相手に勝てることはありません。

 

勝てる選手は、勝つイメージを必ず持っています。

 

勝つイメージとは?

 

勝つイメージを持っている選手にとっては普通のことかもしれませんが、持てていない選手はそもそも勝つイメージがどんなものかわからないと思います。

 

まず、勝つイメージとは何か、少し考えてみます。

 

勝つイメージを一言で説明するのは難しいのですが、例えば、以下のようなものの統合的なイメージと考えていただくとわかりやすいと思います。

 

  • 自分の強みが理解できている
  • その強みを発揮した試合展開をイメージできている
  • 逆に自分の弱みも理解できている
  • その弱みを試合中に封じる術をイメージできている
  • 「相手がこのタイプの場合は自分はこうする」とタイプ別の対応をイメージできている
  • ラリー展開における得意パターンをイメージできている
  • 最後は自分が競り勝ってガッツポーズし、相手と握手している姿をイメージできている

 

このようにたくさんあげると難しく感じるかもしれませんが、あくまでもイメージです。頭で考えて言語に落とせる必要はありません。

 

これを「自信」という人もいるかもしれません。これらのイメージからくるものを自信というなら、そう言い換えてもいいと思います。

 

注意したいのは、勝つイメージは具体的という点です。自信があっても具体的なイメージがない場合、それはいわゆる「根拠のない自信」です。根拠のない自信もあるに越したことはありません。ただ、今回の話はこれではありません。

 

ジョコビッチにどうやって勝ったのか

 

例えば、世界No.1のジョコビッチ選手に勝った選手は、試合前、自分が勝てる可能性の方が低いと考えているかもしれません。それでも勝てる可能性があると信じていたから勝てました。

 

しかし、おそらくその選手が考えていたことはこれだけではありません。具体的に勝つイメージを持っています。

 

まず何より重要なことは、自分のパフォーマンスを過去最高に高めることです。それをどの手順で実現するのか、具体的にイメージできています。

 

自分の力を120%発揮するために自分がやるべきこと、やってはいけないことを具体的にイメージできているということです。

 

それが勝つイメージのファーストステップです。

 

さらに、対戦相手の過去のプレーを事前に録画で確認、研究し、特に試合序盤に、自分がどのような展開に持っていくのかをイメージしています。例えば、長いラリー戦に持っていくのか、早く仕掛けて短期戦でポイントを取りにいくのかを具体的にイメージしています。サーブはどこに打つのか、セカンドサーブのリターンはどうするのか。

 

もちろん、中盤、終盤もイメージしていますが、そこは序盤の結果によって変わってくるので、より詳細までイメージするのは序盤のプレーです。

 

これが勝つイメージのセカンドステップです。

 

試合序盤にやるべきことができて、用意していた秘策もはまり、格上の選手に勝てる可能性が高まる試合終盤、過去最高のパフォーマンスを発揮しています。

 

感覚が研ぎ澄まされた結果、頭で考えて反応、判断しているのではなく、身体が自然と反応し、直感で判断している状態です。

 

勝つイメージをもとに力を発揮してはじめてこの領域に踏み入ることができます。勝つイメージを持てていない状態でこうなることはありません。

 

勝つイメージは試合中にも更新される

 

プロの世界でも珍しいことではありませんが、大学のリーグの場合、相手選手の事前情報が少ないことがあります。

 

この場合、勝つイメージは想定の中で具体化し、試合の中にそのイメージを更新していきます。

 

想定の中といっても「(相手のプレーがどうであれ)自分はこうやってパフォーマンスを上げていく」というファーストステップは相手がどんなタイプ、どんなレベルであれ変わりません。

 

試合の中で、ミスや相手の好プレー、カウントという結果に心を乱されることなく淡々と、自分のパフォーマンスを上げるためにやるべきことをやります。

 

その過程で「この相手はこう展開するとポイントを取りやすい」というパターンを見出します。

 

事前情報がない場合は、試合本番で収集した情報から勝つイメージをつくっていきます。

 

相手が格上であることがわかれば、リスクを背負って相手にいろいろなことをさせ、相手の弱点を見つけ出し、そこを攻めるというイメージに変えていきます。

 

勝つイメージは、試合中により確信に近いものに更新されていきます。

 

勝つ経験と自己肯定感

 

最後に、どんな経験をするとより精度の高い勝つイメージを持てるようになるのかという話をしたいと思います。

 

勝つイメージは練習をいくらしても持てるようにはなりません。必要なことは、試合経験の積み重ねです。

 

緊張感のない身内の練習試合でもダメです。本番の真剣勝負の中で持てるようになります。身内でも、例えばレギュラーの座を懸けるような場であればよいでしょう。

 

ただし、本番の数を増やすだけでもダメです。特にはじめは勝つ経験が必要です。

 

なので、勝てる可能性の高い、少し格下の相手と試合する機会をつくり、真剣勝負をして競り勝つ経験をつくり出す必要があります。

 

また、勝つイメージを持てる人と持てない人の差は自己肯定感の有無とも言えます。

 

競技スポーツに置いては、「勝てる!」という自己肯定感は「勝った!」という実績のみが育てます。

 

練習量は多いのに、「なかなか試合本番で勝てない」という選手は、自分で勝てる機会を作りましょう。

 

勝つイメージを持ててない選手は、圧倒的な試合経験を積め!特にはじめは格下の相手を選んで真剣勝負すべし!