元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

試合に勝つために「相手の弱点を見抜く」をしちゃダメな時がある。

テニスの試合に勝つために、できるのならば、相手の弱点を探し、そこを突くべきです。

 

例えば、相手に以下の弱点があることに気づければ、それだけ試合を優位に進められます。

 

  • フォアよりバックの方が不安定
  • あるいはその逆
  • スライスの返球率が低い
  • 左右に動かすとミスが増える
  • 前後の動きに弱い
  • ボレーが苦手
  • バックの高い打点を嫌がっている
  • 低い打点の処理が下手
  • 緩急に対応できていない
  • バックでストレートに打たせるとミスを誘える

 

レベルが高くても低くても「比較的チャンスになりやすいプレー」「比較的返球が甘くなるプレー」というものは存在します。

 

もちろん、レベル差が大きく、相手が自分と比べて圧倒的な技術力を持っていれば、これらの弱点を探すことはほぼ不可能となります。

 

しかし、一般的に競技スポーツはレベルによって出場できる大会が異なるため、圧倒的にレベル差のある相手と対戦することの方が少ないでしょう。

 

だから、できるのであれば相手の弱点を分析してそこを突くべきです。

 

ただ、それを意識しすぎてはいけない時があります。

 

相手の弱点を意識しすぎてはいけない状況にもかかわらず、そこを意識してしまっている選手は少なくありません。

 

それは次のような時です。

 

  • 相手に惑わされることなく、自分の力を出し切れば勝てる相手の時
  • 弱点を突く必要があるが、まだ自分のプレーを自動化できていない時

 

今回は、この2つめについて書きます。

 

自動化とは、テニスで言うと、技術的なことを意識しなくても、打ちたいところに打ちたいボールを打てる状態です。

 

自動化についてもう少し詳しく知りたいという方は、以前の記事「試合では「自動化」できている技術しか使えない。運動学習でいう自動化とは?」も参考にしてみてください。

 

ラケットやボールなど、道具を用いたスポーツはその道具を上手く使いこなすということに意識が奪われやすい分、自動化がより重要なポイントとなります。

 

相手を観る前に自分を観ろ

 

「自分のプレーを分析し、改善する」

 

これは、試合に勝つために不可欠で、やらなくてはいけないことです。一方、

 

「相手の弱点を分析し、そこを突く」

 

これは、試合に勝つためにできた方がいいことですが、相手によってはそれを考える必要がないこともあります。

 

あるいは、弱点がわかっても、それを実践できない状態もありします。

 

つまり、後者よりも前者の方が重要ということです。まずは自分のパフォーマンスを最大化し、自動化することが最優先。相手の弱点を意識するのはその後です。

 

たとえ弱点を突く必要のある相手でも、自分のプレーを自動化できていなければ、相手の弱点を突こうとしてはいけない、ということです。

 

理由はいうまでもないと思います。

 

仮に、「相手はバックハンドストロークの方が弱い」ということに気づけても、自分が相手のバック側という狭いコートにボールを入れ続けることができる状態になければ簡単にポイントを失ってしまうからです。

 

プレーの自動化に時間がかかる選手は、自動化できるまでは、自分のプレーの分析と改善が9割です。残りの1割で相手の弱点を分析しておく。それくらいのイメージです。

 

テニスは、相手との戦いのように見えて、まずはじめにすべきは、自分との戦いなのです。

 

これは、すべての個人スポーツに共通していえます。すべてが自分の内側にある問題なのです。

 

相手がどうだったか、ではなく、それに対して自分ができることをすべてやったか。そこが重要なのです。

 

いや、それしかできないのです。

 

「相手」は外的要因のひとつにすぎません。ゴルフでいう「自然」と同じです。

 

「今日は風の強い日だ」というのと、「今日の相手はストロークがパワフルだ」というのは同じです。

 

その環境の中で、どうやって自分のパフォーマンスを最大化するか、それを突き詰めるのがスポーツです。

 

いつも結果は、後からついてくるものなのです。

 

この「相手のプレーを感じとりながら自分のプレーを分析、改善することに集中する」という行為は、「相手の弱点を分析し、そこを突く」という行為とは真逆の行為です。

 

前者は、自分を観る行為です。後者は、相手を観る行為です。

 

まずは、自分に意識を集中します。

 

自分のパフォーマンスを最大化するためには、自分の動作に意識を集中し、動作を正していく以外方法はありません。

 

150段の階段を駆け上がると実感できる

 

「自分の動作に意識を集中させた方がパフォーマンスがあがる」という事実を実感できるトレーニングがあります。

 

それが、150段ほどの階段を1段も飛ばさずに駆け上がるトレーニングです。

 

このトレーニングは、1ポイントで長い時間ラリーすることになる際に必要となる体力がつく上、足腰の筋力も鍛えられるのでおすすめです。

 

全速力で駆け上がる必要はありません。もっとも短時間で最後まで上り切れる一定のスピードで駆け上がります。体力が少ない人は早歩きで上っていくイメージかもしれません。

 

学生であれば、校舎内にいくらでもあるその階段で試してみてください。

 

その際、例えば、以下のように、自分のカラダの外のことに意識が奪われているとパフォーマンスが落ちます。

 

「ここでまだ半分か」

「辛い」

「ここだけ段差が高いな」

「こんなところにゴミが落ちてる」

 

逆に、例えば次のように、自分の動作に全神経を集中させながら実践するとパフォーマンスが上がることがわかります。

 

「背筋を意識しながら少し前傾」

「機能している筋肉はここだな」

体幹を意識して軸をぶらさない」

「一定のリズムで」

 

極端にいえば、筋肉や細胞ひとつひとつを意識するようなイメージです。カラダの内側のほんのわずかな異常にも気づけるような状態ともいえます。

 

この感覚を活用した上で、相手が打ち込んでくるボールに応じて、自分がイメージしている通りに、自分の身体を動かせるようにならなくては、勝利はありません。

 

まずは、相手ではなく、自分の動作に全神経を集中し、ラリーのリズムに動作のリズムを合わせていきましょう。

 

それではまた、いつか、どこかで。