チーム力を最大化するために不可欠といわれる心理的安全性とは?またその高め方。
前回の記事「ダブルスの落とし穴。自己主張できない選手が試合序盤に陥りがちなこと。」で、心理的安全性について言及しました。
簡単にいうと、ダブルスでは、心理的安全性なしに、ペアのパフォーマンスを最大化することは不可能という話をしました。
今回は、どのようにすれば心理的安全性をつくれるのかということについて書きたいと思います。
心理的安全性とは?
心理的安全性とは、チームメンバーが感じたままの想いを素直に伝えることのできる環境や雰囲気のことです。
チームの生産性を高める唯一の方法として、2015年に米グーグル社が発表したことをきっかけにビジネスの世界で大きな注目を集めるようになりました。
唯一の方法と書きましたが、グーグル社が発表したチームのパフォーマンスを最大化するために必要な要素はこれ以外にも存在します。
今回は詳しくは書きませんが、具体的には以下の4つです。
- 信頼性
- 構造と明瞭さ
- 仕事の意味
- 仕事のインパクト
ただ、これらに先立つものが心理的安全性であるとグーグルはいっています。これら4つがあっても、心理的安全性がないとチームの生産性は上がらない。また、例えば信頼性は、心理的安全性がないと生まれない。そう考えられています。
そしてこれは、テニスのダブルスにもいえます。
テニスのダブルスに置き換えるとわかりやすい
テニスのダブルスをする際、あなたのパートナーが短気で、あなたのミスに対してすぐに怒る怖い先輩だった時のことを想像してみてください。
そんな先輩と組んだ状況で自分のパフォーマンスを最大化するのは難しいでしょう。これが、心理的安全性がない状況です。
心理的安全性が満たされている状況を100とし、まったくない状況を0とするなら、この例は限りなく0に近い状況といえます。
ここからは、パートナーにとって心理的安全性が100の状況をダブルスの試合中につくるためにはどうしたらいいかという話をしていきます。
ちなみにこの話は、パートナーに要求することではなく、あくまでも自分が実践することです。
もちろん、パートナーにもこれを実践してもらえるに越したことはありませんが、これができていない(わかっていない)パートナーを批判しても何もよいことはありません。
働きかける場合でも、パートナーにこの記事を共有してみる程度にとどめることをお勧めします。
ただし、これを読んでも変われない人は変われません。どうしても精神的に耐えられない時は、ダブルスパートナーを解散するのが一番です。
少し話がそれましたので戻します。
心理的安全性を生み出すための大前提
まず、例えば大学庭球部のリーグ選手なら、大前提として、以下を理解する必要があります。
「勝ちたいと考え試合をしている選手がミスをした時、それはミスをしたくてしているわけではない」
当然、わざとミスっているわけではありません。結果はミスでしたが、勝つために一生懸命やっています。
だから、積極的なプレーから生まれるすべてのミスは「ナイストライ!」なのです。
また同様に、以下を理解する必要があります。
「ミスしたにもかかわらず笑顔が出てしまう選手がいても、試合に勝つことに無責任になっているわけではない」
それは笑顔の使い方が人によって違うだけで、本人は責任を感じています。
ミスをして「よかった」と考えている人はいません。皆、ミスしたことは「まずかった。次こそはこうやって成功させてみせる」と考えています。
このように、心理的安全性の高い関係を築くためには、まずパートナーを無条件に信じることが不可欠です。
心理的安全性を生み出すコミュニケーション
次に理解しないといけないことは、自分はパートナーのパフォーマンスに責任を持つ必要がないということです。
これはすなわち、パートナーが調子が悪い時に、パートナーの調子が上がるように働きかける必要がないということです。
もっというと、自分が働きかけても、例えば励ましたりアドバイスしても、パートナーのパフォーマンスは良くなりません。変わらないか、悪くなる方が圧倒的に多いのが現実です。
あなたがあの有名な大阪なおみ選手の元コーチのサーシャ・バイン氏であれば話は別ですが、そうではありません。
そんな時に自分がやるべきことは、パートナーの今のパフォーマンス(できること)を考慮した上で、自分ができるプレーの内、最も効果的なプレーに集中することです。
パートナーの調子はパートナー自身が上げる以外ないのです。
そもそも、パートナーも責任を感じてそれをしようとしています。だからそれを信じ、自分のプレーに集中し、黙って待つのが一番ということを理解します。
もし、パートナーの「ミスして申し訳ない」という気持ちが大きくなりすぎてしまい、自分のプレーを見失っているようであれば、次のように伝えます。
「ミスしたことを気にしすぎなくて大丈夫。あなたのミスを私は気にしていないから、私がどう感じているかも気にしなくて大丈夫。お互いが自分のパフォーマンスを自分で上げることだけに意識を集中しよう。それだけで状況は改善するはず。よし、いこう」
この言葉にある通り、パートナーのミスを責める気持ちも持ってはいけません。理由は、それを持っていいことは微塵(みじん)もないからです。
以上のことを心得ていれば、心理的安全性の高い環境をつくることができます。是非、これを機に心理的安全性の高いペアを築いてください。
もちろん、庭球部という単位でチーム力を最大化するのにも応用できます。
以前「大学のリーグで「昇格」という目標をチームで達成するために必要な5つのこと」という記事を書きましたが、心理的安全性を生み出す要素は、そこでいうと「愛」と言えそうです。
幹部は、昭和な体育会系を卒業し、心理的安全性の高い、賢いチームに変えていく努力をしていきましょう!