元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

あと1ポイント!という場面について訂正する。大事なのは、意志。

以前「メンタルが弱い選手ほど「あと1ポイント取るだけ」という場面ではじっくりプレーする」という記事を書きました。

 

これは、メンタルの弱い選手に限らず、すべての選手に共通する話だと私は考えています。

 

この記事を書いた後に、何人かの選手と会話をしました。すると、「じっくりプレーする」という表現だと誤解を与えている可能性があるということがわかりました。

 

なので今回は、そのニュアンスを正確に伝えるために訂正したいと思います。

 

「中途半端なプレー」を具体的に理解する

 

まず、誤解してほしくないのが、以前の記事タイトルにある「じっくり」が「つなぐ」ではないということです。

 

もっともやってはいけないのが「相手はポイント的にも精神的にも追い込まれているわけだから、こっちはリスクをとらずに、つないでいればミスってくれる可能性が高いだろう」と考え、次のポイントに入ることです。

 

この考え方が問題である理由は、意志がなさすぎることです。

 

競りあっている試合でもっともやってはいけないのが意志のない中途半端なプレーです。

 

経験豊富な相手ほど、このシーンでは、緊張感が高まるそのプレッシャーを跳ね除けるために強気なプレーを選択し、底力を発揮してきます。

 

大学のリーグ選手ならそれが当たり前と考えた方がいいでしょう。

 

そのため、ただ返球しているだけになるとほとんどの場合、押し切られます。

 

このシーンでは特に、一球一球に意志のあるボールを打つ必要があるのです。

 

「とりあえず」「なんとかなる」こういった発想ではダメだということです。

 

安易な考えが中途半端なプレーを生む

 

つまり、以前の記事で伝えたかったことは、攻めるべきか、守るべきかということではないのです。

 

安易な考えではダメということなのです。

 

攻撃的なプレーを選択するにせよ、守備的なプレーを選択するにせよ、安易な考えのままプレーに入ってはダメということです。

 

以前の記事にも書いた通り、人は苦しみから逃げようとします。この安易な考えはその現れです。

 

安易に「強打すれば返ってこないだろう」と考えてはダメなのです。

 

安易に「つなげていればミスってくれるだろう」と考えてはダメなのです。

 

ここでいう意志は「戦術的な意図」ではない

 

ではどうればいいのか。それは、次の2つのケースによって異なります。

 

  1. 超集中状態に入り無心でプレーできているケース
  2. このポイントを取りたいという欲から冷静さを欠いているケース

 

理想は1の無心にプレーすることです。無欲といった方がわかりやすいかもしれません。

 

「この1ポイントはどうしてもほしい」という場面でも無心で、淡々とプレーする精神状態をつくれれば、あとは脳ではなく、細胞のおもむくままにプレーするだけです。

 

わかりやすく例えるなら、テニスの王子様でいう「無我の境地」です。プレーが自動化されている上に、そのプレーの質が極めて高い状態。これが最強なのです。

 

しかしこれは、簡単なことではありません。特に拮抗した試合では、ほとんどの選手が欲に駆られ、プレーが狂います。

 

それでも、ポイントに入る前にその状態に気づくことはそれほど難しくないので対策することは可能です。

 

この時やらなくてはいけないことは、1の無心状態を意図的につくるという作業です。

 

それは、以前の記事「試合に勝つために「相手の弱点を見抜く」をしちゃダメな時がある。」で書いた、試合序盤にやるべきことと同じです。

 

自分のカラダが、やるべき動作をしているかということに意識を集中し、打点の質を上げる作業に全神経を集中するということです。

 

具体的には、例えば以下です。

 

  • スプリットステップの直後にラケットセットを完了させる
  • 打点直前の最後の50cmのラケットワークが正しく動作できていることを感じとる

 

つまり、ここでいう意志とは、外的要因に心を奪われることなく「自分の打点に全神経を集中する」という強い意志なのです。

 

これを追求するということは、その時その瞬間の最善のショットを選択していることに他なりません。

 

この場面で必要なことは、

 

「このポイントがほしい」という感情に心を奪われることなく、

 

「こうやってポイントを取ろう」という戦術に意識を奪われるでもなく、

 

「自分の打点に全神経を集中する」という強い意志をもってプレーすることなのです。

 

是非、次の試合の「あと1ポイント!」というシーンで実践してみてください。