元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

本番で力を出しきれない理由は、やるべきことの順番を守れていないから。

大学庭球部でコーチをしているとさまざまなレベルの選手に出会います。

 

レギュラー選手の中でも1番手を張れる選手と5番手6番手の選手の実力には割と大きな差が生まれるものです。

 

部員の中にはその5番手6番手のレギュラーの座を狙う選手もいるのでレベルはさまざまです。

 

私のミッションはチーム力を最大化することです。

 

大学リーグは団体戦で、団体戦の場合、チーム力の最大化はすなわち「底上げ」ということになります。団体戦の勝利は、選手層の厚さが鍵を握るからです。

 

また、私が参加する練習は全部員(またはレギュラーのみ)が参加する合同練習です。

 

そのため、1番手の選手のために指導することはほとんどありません。チームの底上げを目的に、中堅選手たちのレベルアップにフォーカスし、基本的な技術や戦術、考え方などを指導することが多くなります。

 

このブログの内容が基本的なものが多いのもそれが理由のひとつです。

 

今回紹介するステップの前半部分は、経験豊富な選手によっては初歩的な話と感じることもあるかもしれません。

 

それでも、これができていないことで試合を少し不利にしてしまっているリーグ選手を見ることは少なくありません。

 

また、後半ステップは実績のある選手も改めて確認すべきポイントと思います。

 

基本を確認するという意味でも参考にしてみてください。

 

試合中に踏まなくてはいけない5つのステップ

 

前置きがながくなりましたが、記事タイトルにある、本番で力を出し切るために試合中にやらなくてはいけないことに話を移します。

 

結論からいうと、その内容と順番は以下です。

 

  1. 自分の打点の質を高めることに全神経を集中する
  2. その結果プレーが自動化される ≒ 持っている技術力を80%以上発揮できている
  3. 用意していた戦術を実践する
  4. 相手の弱点に気づきそこを突く
  5. 相手と駆け引きする

 

この順番を間違えると自分が持っている力を出しきれずに終わります。

 

相手との技術力に差があり、試合を優位に進められる場合は、ステップ2「プレーの自動化」までできるだけで勝てます。

 

そうでない場合は、この順にすべてのステップを体現できないと勝てません。

 

その前半ステップで特に主張したいことは、「プレーを自動化できてはじめて、いろんな狙いをミスなくできるようになる」ということです。

 

逆に言うと、「自動化できていないのに難しいことをやろうとしている自分に気づきましょう」ということです。

 

自動化するまでの話はこれまでもたくさん書いてきているので、今回は特にそれ以降のステップについて、細かいニュアンスを意識しながら説明します。

 

自動化については以前の記事「試合では「自動化」できている技術しか使えない。運動学習でいう自動化とは?」をご確認ください。

 

ちなみに、プロや経験豊富な実力のある強い選手は、このプレーの自動化を1ポイント目からできます。

 

技術力も高い上に、試合前の準備・ルーティンが確立されており、それをすれば誰が相手でも1ポイント目から持っている力の80%以上を発揮できるのが実力者です。

 

だから、試合の序盤から、準備していた戦術やカラダに染みついたラリー展開を実践し、高難度のプレーでポイントを取りに行けたりします。

 

しかし、1ポイント目からプレーを自動化できない選手がそれを知らずに真似しようとすると、つまり、試合序盤から戦術を意識しすぎると、ミスを量産することになります。

 

その結果、悪循環に陥り、持っている力を出しきれず、不完全燃焼に終わります。

 

「格下に負けた」「力を出しきれなかった」と反省することの多い選手はこれに気づければ勝率を上げることができます。

 

ちゃんと自分の力を見定めて、段階を踏まなくてはいけません。

 

次は、具体的に試合中に意識することについてです。

 

チャンボのミスもこれでなくなる

 

プレーが自動化されるまでは、内的要因に意識を集中し、以前の記事「試合に勝つために「相手の弱点を見抜く」をしちゃダメな時がある。」にも書いたように、カラダの可動域を広げられていることと打点の質を高めることだけを考えます。

 

自動化できたら次は、狙いを持ってプレーをすることを考えたいわけですが、「次はあそこに打つべき」といった考えが先走ってはいけません。

 

ここが今回もっとも伝えたい点です。ただ、伝えるのが難しい点でもあるので具体例を交えながらお伝えします。

 

試合中に、急に集中力が途切れて、見えていた景色が変わってしまい、調子を落とすといった経験をしたことがある選手は多いと思います。

 

その原因は、外的要因に意識を奪われたことにあります。

 

例えば、ラリー中に前述の「次はあそこにうつべき」や「相手の弱点であるバックハンドを狙わなくては」という思考に気を取られたり、ポイント間に応援してくれている人のことを考えプレッシャーを感じてしまったり、テニスとは関係ないこと、例えば「お腹すいた」ということがふと頭をよぎったり。

 

これらは自分の外側にあることです。試合中はこれらに意識を奪われてはいけません。

 

これにより集中力が途切れた状態に陥ったら、もう一度、内的要因に意識を集中し、プレーの自動化を1からやり直す必要があります。

 

そもそも、「試合ではその状態が普通」「試合はそういうもの」と思い込んでいる選手も多く見かけます。

 

そういった選手の多くは「調子の波が大きい」という課題を抱える選手です。ここに書かれていることを理解することができ、体現できればその課題も克服できます。

 

前述のやらなくてはいけないことのステップ3以降、「用意した戦術を実践する」「相手の弱点に気づきそこを突く」「相手と駆け引きする」は、内的要因に意識を集中したまま、感覚的に、直感を頼りに実践するものなのです。

 

「よし、相手を外に追い出したから、次はオープンコートに…」

 

といったことをラリー中に考えていてはいけないということです。その瞬間に考えることがあるなら、

 

「打点の質に頼って打て」

 

です。「次はオープンコートに…」ということは言葉にしなくても実行できます。

 

いや、その瞬間にオープンコートに打ち込むことだけが正解ではないのです。焦ってミスをするぐらいなら、打ちやすいところに質の高い深く強いボールを打つことの方が正解に近い。

 

打つべきコースはその瞬間に「感じる」ことであって「考える」ことではない。

 

このことを理解できると、プレーの質が格段に上がります。

 

戦術は頭で理解し身体で覚える

 

逆にいうと、戦術、すなわち、意図を持ってコースを狙うという行為は、感覚的にできるように訓練しておく必要があるということです。

 

「この場面では、ここに打ち返せた方がいい、なぜならこうだから」

 

ということを理解した上で、それを意識して繰り返し打ち、実践しながらさらに理解を深め、カラダに覚えさせるという練習です。

 

これについてはまた別の機会に書きたいと思います。

 

話をまとめます。

 

試合では、何よりもまず、自分のプレーを自動化します。自動化ができたら、脳みそを働かせすぎずに感覚と直感を頼りに相手を崩しましょう。

 

これは、ベーシックなサーブとストロークを自動化できる選手であれば、その技術レベルに関係なく誰にでもできます。

 

この境地に気づいている選手は多くありません。是非、これを早期に体現し、他の選手と差をつけてることを目指してください。