元某大学テニス部コーチブログ

学生テニスプレーヤーへ

ストレートに打つベストなタイミングを理解する。そして身体で覚える。

前回の記事「プロがストレートを狙う割合を知り、考え方がわかればプレーの質は上がる。」では、シングルスにおけるダウンザライン(ストレートショットの中でももっとも難しい、サイドラインに沿うように打つショット)のリスクやプロがそれを打つ頻度とその目安、練習環境などを紹介しました。

 

今回は、ダウンザラインをどのように使うのか、どのような時に有効で、どのような時に打ってはいけないのか、それを考え、理解を深めます。

 

ストレートに打ってはいけない場面

 

シングルスでストレートを正しく使いこなせるようになるためには、まずはじめにストレートに打ってはいけない場面を理解するのが近道です。

 

これは覚えやすいのでラリー練習で実際に試してみながら理解を深めることをおすすめします。

 

ストレートに打ってはいけない場面は以下です。

 

「自分の身体がシングルスサイドラインよりも外に流れる時」

 

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ここでストレートに打ってしまうと次に相手にクロスに切り返されてそのボールに対応できなくなります。

 

これはやってみればすぐに理解できるでしょう。

 

「身体がコートの外に流れた時はクロスに返球する」

 

これはシングルスの基本です。忘れないようにしましょう。ただし、例外がひとつだけあります。それが以下です。

 

「ダウンザラインを成功させられる確信があり、ポイントが取れることを確信した時」

 

この瞬間は、例え身体が外に流れていても迷わずダウンザラインに打ち抜きます。ただし、一瞬の迷いもなく、成功させられる確信が持てた時に限ります。

 

この確信は、脳みそで考える事ではありません。身体で感じとるものです。

 

ラリーをしながら「ここはストレートだ!」という言葉が脳裏によぎった時点でミスをする確率がグンと高まります。

 

この感覚が理解できると、プレーを自動化しやすく、常に安定した質の高いプレーを維持できるようになります。

 

ストレートに打つひとつ前のショットの方がシングルスでは重要

 

次に、ストレートの正しい使い方[その一]です。これはいたって当たり前の話です。

 

ストレートに打つ前は、必ずクロス方向、ワイドに角度をつけて、相手の身体をサイドラインの外に追い出します。

 

具体的には、ベースラインより前かつサイドライト寄りの打点から、相手コートのサイドライン付近のサービスラインとベースラインの中間あたりを狙う、低く強いボールです。

 

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このショットは当然いつでも簡単に打てるショットではありません。センターまたはクロスの打ち合いの中で深く打ち込んではじめてこのショットを打つチャンスが訪れます。

 

見ての通り、相手から遠いところに低く強く打つため、このショットだけで決まることもあります。

 

このショットこそが、積極的に相手を崩しにいく場合に不可欠となるシングルスのキーショットともいえます。

 

この後、相手は身体が外に流れるため、前述の通り、クロスに切り返すことが多くなります。

 

それを、間合いを詰めながら(時間を奪いながら)、ストレートに展開することでさらに崩していきます。

 

ここで重要なことが、「このショットで決める!」とは考えないということです。

 

あくまでも「さらに崩し、次により容易なチャンスボールをつくること」を目的とします。

 

そうすることで、焦りなどからくる力みなどを抑え、冷静にストレートに展開することができます。

 

ストレートは「クロスを刷り込んでから」くらいがちょうどいい

 

もうひとつ、ストレートの使い方を紹介します。ストレートの正しい使い方[その二]です。

 

前回の記事で、ストレートはリスクが高いという話をしました。

 

だからプロもストレートにはこれしか打っていない。技術レベルがその域に達していない我々はもっと減らす必要がある。具体的にはこれくらいを目安にするといいと書きました。

 

だから、こちらの記事にも書いているように、特に動きに固さのでる序盤はリスクを取らずクロス主体で試合をする方がいいでしょう。この記事ではプロもセット単位でストレートに打つ頻度を変えていることを紹介しました。

 

「試合の序盤はセンターか順クロスにしか打たない」という戦略を取り入れると、ここぞというポイントで打つストレートで楽にポイントにつながります。

 

理由はいうまでもなく、相手がストレートにくると思っていないからです。

 

「クロスにしか打ってこない」(または「このパターンの時はクロスにしか打ってこない」)相手がそう思うくらいリスクの少ないクロスで戦うということです。

 

そうすると、相手は無意識のうちにこちらが打つ前に動くようになります。

 

そこでストレートに打つのです。

 

具体的には、試合序盤は、前述のシングルスのキーショットを打った後、相手がクロスに浅めのボールを返球してきても、ガラ空きとなっているオープンコートのストレートではなく、相手のいるクロスに攻めることを迷わず選択するということです。

 

それを実践できるようになるためには、そのコースを選択しても、しっかりとボールを打ち込めばポイントを取ることができるということを知る必要があります。

 

逆にいうと、ストレートは、クロスに自信をつけてから取り組む方がいいといえます。

 

以上が、ストレートに打ってはいけない時、ストレートの正しい使い方です。これを意識しながら、練習では頭で考え、研究しながらたくさん実践してください。

 

たくさん実践すると試合で正しいひらめきが生まれるようになる

 

最後に、試合におけるメンタルの話をします。以下に書かれたことを試しながら理解することができれば、試合本番でストレートを正しく使えるようになります。

 

試合で今この瞬間、クロスに打つべきか、ストレートに打つべきかは、頭で考えるものではありません。神経がとがすまされる結果、身体で反応するものです。

 

これだけ聞くと、「何を訳のわからないことを」と思う方も少なくないと思いますが、すこし我慢して読み進めていただきたいです。

 

これが理解できると試合で格段にミスが減り、プレーの質が上がります。

 

これを理解するために、次の試合で以下を実践してみてください。

 

まず、試合前、基本的にはすべてクロスに打つものと決めておきます。前回の記事で絵を用いて紹介した練習環境のタオルとタオルの間を通すイメージです。センターバンドの上あたりを通すイメージでもいいでしょう。

 

さらに、ストレートに打つのは、一瞬のひらめきで「こうすべきだ」と確信し身体が勝手に反応した時だけと決めておきます。

 

これで、コースに迷うことになくなります。

 

そして、ボールと打点に全神経を集中し、ポイントを取ることを考えるのではなく、飛んできたボールに対して質の高い反応をし、質の高い打点で打ち返すことだけに集中します。

 

すると自ずと、プレーが自動化されると同時に、相手のプレーパターンと自分がポイントを取るためにこの瞬間すべきことを身体が感じとり、勝手に反応するようになります。

 

打つ瞬間に頭で指示を出していないのに、身体が勝手にストレートに打つことを選択するようになります。

 

これを体現してください。

 

この世界は、プロだけの特別な世界ではありません。技術ではなく、メンタルの話なので、誰にでもできます。

 

私を信じて、そのメンタルを実践してください。必ず辿り着けます。

 

それではまた、きっとどこかで。